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アナリストコラム

ROE水準と株価バリュエーションについて考える ‐藤根 靖晃‐

2010年03月19日

現在、Yahoo! Finance上にあるIFIS株/予報に「IFIS/TIWコンセンサス225」というコラムを毎週月曜日に連載している。
http://kabuyoho.ifis.co.jp/index.php?action=tp1&sa=column&p=c_cat05

これはIFISコンセンサス・データ等をベースとして、アナリストコンセンサス予想を日経225型にモディファイし、日経平均の今期予想EPS、来期予想EPSといった企業業績のファンダメンタルの推移を捉えている。また、同時に各種指標も割り出し、妥当な(日経平均)株価水準のレンジを考察するというものである。

IFIS株/予報への掲載は、本年2月8日からであるが小職のブログ「ラ・マンチャのアナリスト」には実験的に昨年12月から算出結果の掲載を始めた(ただし、IFIS株/予報に掲載するに当たっては解説文や形式を見直している)。アナリストコンセンサスを225型にモディファイするというアイディアは5年位前からあったのだが、データの整理を含めて本格的に取り組んだのは昨年秋からであった。

話を戻すが、「IFIS/TIWコンセンサス225」を算出した際に注視しているのが予想ROEの数値である。日経平均が1万円を回復した昨年6月の段階では来期ベースのROEは6.12%(6月12日、TIW算出)であったが、2010年3月5日では7.00%と7%台に漸く手が届くところまで来た(直近の3月12日は6.93%に若干低下)。
6%台と7%台では決定的な違いがある。6%台はまだ金融相場なのである。7%台になると企業業績との相関が高くなってくる。所謂、業績相場への突入である。

株式の期待利回り(投資家の要求利回り)は、無リスク資産の金利+株式のリスクプレミアムである。株式のリスクプレミアムをどのように設定するのかによって異なるが、一般的によく使われる6%とするならば、期待利回りは(10年国債の金利1.3%)と合わせて7.3%となる。これは株式投資の期待利回りであると同時に、企業経営においても株主資本に対して求められる利益水準となる。
つまり、仮に投資家の期待利回りを7.3%とするならば、ROEが7.3%を下回る企業は投資(=株主資本)に対する要求リターンを達成していないことになる。PBR1.0倍割れ企業に低ROE企業が多いことはこのことを示している。

余談だがリスクプレミアムは、投資資金の多寡、投資家のリスク許容度、国内・国際情勢等によってかわって来るので一概に6%が妥当であるとは言えない。ただし、以前にも書いたことがあるが、2005年から2007年頃を株式市場の正常な状態とするならば、5.5%?7.0%の範囲内でほぼ推移していた。

さてROEから妥当な株価水準を考察するという方法もある。
それには投資家の要求利回りを推定する必要があるのだが、便宜的に7%を仮条件に置くとしよう。つまり、ROE7%の企業がPBR1.0倍となる。ROE8%の企業はどうだろうか? 0.08÷0.07=1.14 1.14倍である。
同様にROE9%ならPBR1.29倍、ROE10%ならPBR1.43倍となる。
逆にROEが低い会社の場合は理論上のPBRは1倍未満となる。ROE5%なら0.71倍、ROE4%なら0.57倍となる。
ただし、実際には単純にこうした結果にはならない。資産価値(解散価値)によるサポートや成長率(期待)が入ってくるからである。

PER、PBR、ROEの関係式は次の通りである。
ROE=(1÷PER)×PBR
バリュエーションを考える上では常に頭に置いておきたい。

最後にこの関係式から日経新聞のマーケット欄から各市場のROE(今期予想ベース)を算出してみよう。
株価収益率(PER)と純資産倍率(PBR)の数字を上記式に当てはめると直ちに算出できる。
(いずれも3月15日現在)
日経225 4.27%
日経300 4.32%
日経500 3.95%
1部全銘柄 3.89%
2部全銘柄 2.55%
ジャスダック 6.08%

こうしてみるとジャスダックのROEが突出して高いことが伺える。
ネガティブに受け止めるならば、今期予想の達成に対する信頼感が低い可能性や、(JASDAQは内需型企業が多いだけに)来期の成長性が著しく低い可能性も考えられる。割安と結論付けることは些か早計かもしれない。

他方で新興株式市場に対する資金供給が細っている流動性の問題と考えることも出来る。また、小型株には信用リスクがプレミアムとして加算されている可能性もある。
来期も含めて国内景気全体の回復が見られるようになり、銀行の融資姿勢も変ってくるのであれば(メガバンクや地銀の決算にはこうした点で注意を払う必要がある)、株式市場が回復基調を辿る中では最も高いパフォーマンスが期待できるのではないだろうか。

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