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アナリストコラム

「分かりやすい」化粧品で国内市場の活性化を望む -高橋 俊郎-

2010年02月26日

国内化粧品市場は厳しい状況が続いている。そのため資生堂やファンケルなどの海外展開を加速している企業が好感されている状況だ。全国百貨店売上の1月速報の化粧品売上高は14カ月連続マイナスであり、国内の化粧品市場は前年同期比で3-4%減少している模様だ。

市場縮小の要因は、㈰不況の影響で1回の使用量を減らしている、㈪これまで遊び感覚で数種類のメーキャップなどを購入していた女性が買い控えている、という要因が大きいといわれている。人口構成(高齢化、退職など)の変化により、化粧離れがあるという仮説もあるかと思うが、減少には歯止めがかかっていないのは事実である。しかし、中には国内で好調に業績を拡大している企業がある。

代表的な企業がロート製薬、ドクターシーラボである。この両社に共通しているキーワードは「分かりやすさ」、「シンプルさ」である。ロート製薬は『肌研(ハダラボ)極潤シリーズ』でヒアルロン酸を全面に押し出して販売している。ドクターシーラボは、ドクターズコスメというカテゴリーを創り、『アクアコラーゲンゲルシリーズ』1品で化粧水、乳液、美容液、ブライトニング、化粧下地といった基礎化粧を完了させる製品が主力だ。ロート製薬は海外展開も好調ではあるが、ビューティ関連の『肌研』は上半期では約27%の増収を達成、ドクターシーラボの国内販売は90%以上であり、この数年は2桁の増収増益、今後数年も同程度の業績拡大が可能だろう。

ドクターシーラボの場合、社長の決算説明会プレゼンテーションにおいても消費者目線を貫いていると感じる。「消費者は心変わりが早い」という点を押さえつつ、必要とされる人、見込み客に対して適切な無駄のないマーケティングを実施しているように感じる。同社の主力顧客は40歳代女性。広告に誰もが知っているという有名人を起用しているわけではないが、固定客、見込み客をしっかりと掴んでおり、またトライアル後の購入確率も高い模様。効果的な広告宣伝を可能にしているのは、ドクターズコスメの名の通り、同社製品は、皮膚の専門家が診療なども含め、潜在的な悩みをすくい上げて製品化するところにある。そのため、消費者(見込み客)の本当に欲しいと想定されるものを効果的に提供できる製品開発力が強いと考える。加えて、「分かりやすさ」、「手軽さ」も評価されているだろう。同社によると、ネットなどにより情報は過多になっているが、実際消費者の購買までの時間は短くなっていると分析しているようだ。

ドクターシーラボが牽引しているドクターズコスメ市場は、現在700-800億円市場と見られている。今後も成長が見込まれており、1,000億円市場に早晩到達するであろう。一般的に企業は市場規模が数百億円あれば参入余地があるといった基準を設けていると思うが、ドクターズコスメは既にその市場規模まで達している。既存の業界大手は、㈰ブランド数の多さ、㈪製品ライン間での整合性、など難しい問題があると考えられる。また、一般的に、コンシュマー製品はアンケートや集団面接により情報を吸い上げることが多く、製品開発に対する情報の質の違いがあると考えられる。しかし、現状のままでは、国内化粧品市場は縮小傾向が続く可能性があるだろう。ロート製薬やドクターシーラボのように、製品の「分かりやすさ」、「シンプルさ」の訴求は、化粧品業界を再度活性化させる一つの方向性を示していると考える。

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