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アナリストコラム

本格的な競争が始まる国内SNS、No.1の座  -鈴木 崇生-

2010年02月05日

人口統計月報によれば、2009年8月1日現在の確定値で、15歳から39歳までの総人口は3,891万人である。15歳から49歳までに対象を広げると5,526万人となる。

15歳から39歳といえば国内のSNSにとって年齢構成比の高い層だ。40歳代の獲得に先駆しているGREEへmixiとモバゲータウンが追随を図る点を考えるとまずターゲットが5,526万人いるとしてここでは話を進めたい。

世界のSNSを見ると現状で最も会員数の多いmixiより規模がはるかに大きいSNSは数多い。現地時間の今月4日に公表された資料によればFacebookは4億ユーザーを突破している。しかし、Facebookをはじめ彼らは日本市場へ参入しているものの、シェアは低い。言語の壁が大きいからだと推測されるが、まず国内No1の座を争うSNSはmixi、モバゲータウン、GREEの3つといってよさそうである。

国内No1を名乗ることに対して、会員数は大切な数字であろう。いずれ実際に活動するユニークユーザーの方が指標としては重要になるはずだが、まずは会員数を増やさなければ始まらない。では、実際にはどこまで獲得が出来るものだろうか。

先に出した数字5,526万人を用いよう。インターネット白書2009によれば、SNSに登録している数は1つと答えた層が63%存在する。実際には複数登録するユーザーが増え続けているが、ここではこの数字を用いる。仮に残り37%のユーザーが平均して2つ登録しているとすると、概算の会員数総数は7,571万となる(なぜ平均を2つとしたのかは後述する)。

ケータイではインターネットを用いないユーザーは15-49歳で大凡15%、PCで1日の利用時間が1時間に満たないユーザーが同じく大凡で20%いることがインターネット白書から読み取れる。ネットユーザー白書2008でもインターネットをあまり見ない層が15%程度存在する。単純に15%を除算すると6,435万となる。

視点を転じてNintendoDSを見てみよう。SNS3社は共にソーシャルゲームと呼ばれるコミュニケーションを楽しみながらSNS上でプレイ可能なゲームを課金手段として、SNSの活性化策として取り組んでいる。ただし、世の中にはいわゆるビデオゲームなどに興味を示さないユーザーも多い。カジュアルという点でソーシャルゲームに近いと推察されるNintendoDSは世帯あたりユーザー数が2.8(任天堂調べ)である。国勢調査によると2005年の平均世帯人員は3.49だ。20%程度の人はゲームに興味を示さないと仮定すると、20%除算して考えることも可能であろう。7,571万から20%除算すると6,056万となる。
主要SNS3社のユーザー数を合計(mixiは9月末、モバゲータウンとGREEは12月末)すると5,046万人となる。母数を6,435万人とすると既に78.4%%、6,056万人を母数とすると83.3%を獲得していることになる。現在獲得競争の主戦場である15-39歳へ年齢層を縮小させれば、このパーセンテージはさらに高まることになる。

ネットコミュニティ白書2008によれば平均登録サイト数は平均15.9、58.5%のユーザーが1から10サイト登録している。これだけを見るとかなり数は多い。レジャー白書から趣味娯楽教養で接続するインターネットへの週のアクセス時間は12時間ほどであることが読み取れる。1日平均2時間だ。オンラインゲームやECなどのショッピングサイトも接続時間の中に占めるライバルであることを踏まえると、SNSを3つも4つも遊び倒すユーザーは数少ないと思われる。ゆえに、複数登録者数は平均2つとして全体パイを算出する際の前提に用いた。登録数が多いのは、単純に渡り鳥のように次の娯楽先を求めて登録している側面があるからだろう。基本料が無料のサイトは登録したまま放置されている場合もあると推測すると、SNSも放置対象となっている可能性もある。

これらのことに加え、地域SNSなど細かいSNSが存在することに加え、サイバーエージェントがAmebaで攻勢をかけ、ドワンゴがニコニコ動画でこの競争に加わってくることを考えると、会員数はかなり獲得余地が限られてきていると考えられる。モバゲータウンが1月に純増数で久しぶりに60万台へ乗せてきたが、これはかなり高評価に値すると小職は考えている。数少なくなってきた余地を獲得したにせよ、他からユーザーを奪ったにせよ新規参入者はアクティビティが高いと推測されるためポジティブであろう。また、60万という数字は直近のSNS3社の平均約50万より上方に位置する数字でもある。

課金対象としても、広告媒体価値としても、SNSは会員数がいなければ始まらない。いよいよ本格的に生き残りをかけた競争が始まったと考える。獲得数が頭打ちとなればいずれひとりひとりからどのように収益を上げるかが焦点となる。この点、ディー・エヌ・エーはECサイトが着実に収益を上げていたり、会員の動向を調査するモバゲーリサーチを始めているなど先を見据えた戦略も評価に値する。定性的な評価以前の問題としてアバターの販売収入が落ち込み業績の成長が危惧されたディー・エヌ・エーであるが、ソーシャルゲームを武器に業績は一挙に持ち直した。1月の純増数を見ても、現時点ではディー・エヌ・エーが生き残りをかけて先手を取った印象が強い。

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