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アナリストコラム

今こそアナリストの存在意義が問われる (Analysts be confident !) -岸 和夫-

2010年01月08日

投資家の皆様、アナリストの仕事を御存知でしょうか。簡単に言えば、担当企業を訪問取材し、あるいは決算説明会等に出席し、そこでの内容をベースに、その企業の現状を把握した上で、将来展望、業績予想等を検討し、アナリストレポートを作成する仕事です。こう書くと、何か簡単そうだなと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際はかなり大変な仕事です、本当に。

例えば
<ケース1>
ここに世界的にも有名な画家が描いた1,000万円の絵画と、まだあまり知られていない画家が描いた100万円の絵画があるとします。どちらの絵画に資産価値があるかといえば、偽物で無い限り、一般的には1,000万円の絵画ですね。しかし投資するとしたら、どうされますか。    
価値とは何かいう議論は、ここでは横に置くとして、ある鑑定士Aは、いずれの絵画も価値は価格通りですから、有名な画家が描いたということで、絶対的に1,000万円の方がいいですよと推薦します。一方別の鑑定士Bも現在の価格は、それぞれ価値相当と判断しますが、将来的には、1,000万円の絵画の価格は1,000万円のままですが、100万円の絵画は、今後人気が出て200万円になりそうだとコメントします。

<ケース2>
Aという企業があるとします。料理に例えれば、このA社はなかなかいい素材で、そのまま食べても美味しいはずなのですが、最近価格が下がってきたことから、見た目が悪く見え、お客様の人気も今ひとつです。ある料理人Bは、これは使えないなと判断します。一方別の料理人Cは、いやそんなことはない。もともと素材はいいはずだから、調理の仕方によっては、十分美味しい料理が作れるのではと考えます。

ケース1の場合は、2つの銘柄を比較して、どちらが銘柄としてお薦めなのか判断するケースです。ケース2の場合は、同じ銘柄に対して、どう判断するかということです。

多くの投資家の方や、証券マン等に影響を与えるという意味でも、ケース1やケース2の場合を含め、どう投資判断をするかはアナリストの最重要な任務と言えるでしょう。ただ単に数字を中心に、ある企業の善し悪しを判断(定数判断)するだけであれば、おそらくアナリストの判断は、大差ないものと思われますし、アナリストは必要ないでしょう。しかしそこに株価という重要なファクターが加わることで、多面的な定性判断が要求され、結果として投資判断に違いが出てくるものと考えられます。

その定性判断を決定する重要な要素の1つとして、見えにくい将来を予測し判断する訳ですから、芸術的センス?勘?というものもポイントになってくると思います。勘とは経験的に蓄積されたものにより引き出され、センスとは天性のものと解釈して頂ければと思いますが、それらをベースに、論理展開できることもアナリストに不可欠な資質の1つだと思います。

常に投資判断が正しければ言うに越したことはないのですが、人間ですから当然間違えることもあるでしょう。大事なことは、当初の判断が間違えたと思った場合は、早急に訂正判断を行うことです(実際は、これがなかなか出来ないことが多いのですが)。一番いけないことは、間違いを恐れて、判断から逃げることです。

日経平均が1万円を超えてきたとはいえ、まだまだ相場は良いとはいえません。しかし相場がいい時、企業収益がいい時は強気、悪くなると弱気では、アナリストは務まりません。むしろ相場が悪い今こそ、アナリストの出番、そのスキル・考え方が問われるのではないでしょうか。

表面の数字にのみ囚われることなく、短期的、中期的な企業判断、投資判断を行い、間違えたと思った場合は早急に判断を訂正し、投資家の皆様に喜んでもらえるように努めることが、まさに今多くのアナリストに課せられた責務ではないかと考えています(With  自戒の念 From  九段下)。

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