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アナリストコラム

市場縮小の中、大手の優位性が高まっているリース業界 -堀部 吉胤-

2009年11月06日

リース事業協会発表の2009年度上期の国内リース取扱高(調査対象241社)は、2兆4,712億円(前年同期比20.5%減)と大幅に減少。月次ベースでみるとサブプライムローン問題が取り沙汰され始めた2007年6月以降、28カ月連続のマイナス。市場の縮小は長期化している。リース取扱高低迷の主因は、景気悪化による民間設備投資の減退だが、民間設備投資に占めるリース設備投資額の比率(以下、リース比率)が2002年度の10.1%をピークに減少傾向に転じ、2008年度は7.3%まで落込んでいることもリース市場の縮小に拍車をかけている。2008年度からリース会計基準変更により、ファイナンスリースのメリットの一つであるオフバランス処理が認められなくなったが、リース比率が低下し始めたのは、このようにかなり以前からである。2007年度から2008年度にかけてのリース比率の低下は0.4ポイントと限定的であり、リース会計基準変更の影響は心配されたほどは大きくはないといえよう。リース各社へのヒアリングでも、ほとんど影響はないという会社も多い。リース比率の低下は地銀などとの競争の激化や、リース会社が与信を厳格化していることなどによると考えられる。

リース市場の縮小する中でも、上場している大手リース会社のリース取扱高の落込みは、リース事業協会の発表数字ほど大きくない。リースでシェアトップの三菱UFJリースに到っては、上期のリース契約実行高が前年同期比5.2%増となっている。オペレーティングリースや建物リースなど、中小や銀行子会社のリース会社が手掛けられないような分野を伸ばしていることが功を奏している。建物リースはオリックスなども積極展開している。地主から定期借地契約で土地を借上げ、商業施設や物流施設などを建築し、テナントに貸す仕組みで、銀行子会社のリース会社は不動産業が銀行法に抵触するため手掛けることができない。オペレーティングリースは残価リスクを取るため物の目利き能力、中古品の販売力が必要となり、やはり地銀系や中小では難しい。オペレーティングリースは2015年に予定されているIFRSの強制適用によりファイナンスリース同様に賃貸借処理が認められなくなる方向だが、残価設定分のリース料が安くなるなどのメリットが残るため影響は限定的とみられる。

大手リース会社は、オリックスの多角化は別格としても、中小企業向けローン、不動産ノンリコースローン、ファクタリング、中古機器の販売など周辺事業への取組みなどにより、リース市場が縮小しリース料率競争が継続する中、収益の維持・向上を図っている。リース事業においても、CO2排出権を割当てたリースなどの新商品の投入や、リース会計基準変更によりユーザーの負担が増した事務処理を軽減するためのサービスの提供など、商品力、システム開発力で大手の優位性は益々高まろう。足下は民間設備投資の低迷、クレジットコストの増加と厳しい状況だが、金融危機が落着きをみせ資金調達環境が改善しているほか、クレジットコストもピークアウトしつつある。11/3期以降の業績の見通しが暗いわけではない。上場リース会社のPBRは押し並べて1倍を大きく下回っている。利鞘の厚いビジネスではないため高いROEを見込みにくいとはいえ、評価不足のリース会社が多いとみている。

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