機械産業全体では依然として厳しい需要環境にあるが、一部では需要回復が顕著になって来ている。それは、半導体製造装置業界である。
半導体製造装置業界各社の動向をみると、ディスコ(6146)は、LED(発光ダイオード)の需要増を背景として、レーザソーの販売が2Q(7-9月)で急増したことにより、2Qの個別売上高(10月1日公表の速報値)は、1Q(4-6月)比で1.6倍に増加した。また、東京エレクトロン(8035)は、10月9日公表の速報値によると、2Qの半導体製造装置受注高は1Q比1.7倍の830億円で、前年同期の受注高(837億円)とほぼ変わらない水準となった。(社)日本半導体製造装置協会が毎月公表している日本製半導体製造装置のBBレシオ(半導体製造装置の販売高に対する受注高の割合。1を超えれば受注が強く、好調な状況を示す)は、6月に1.27となって以降、8月の1.44まで、3カ月連続で1を超える状況が続いており、同業界は今後も当面、回復傾向が続くだろう。
一方、工作機械業界は低調な受注が続き、各社とも今期中の営業黒字化は厳しい状況である。(社)日本工作機械工業会が毎月公表している工作機械受注統計によると、9月の受注総額は432億円(前年同月比62%減、前月比36%増)。今年4-9月累計は1,971億円で、前年同期比7割減と低調である。ここ1カ月間で、大手工作機械メーカーであるオークマ(6103)、森精機製作所(6141)の2社が10/3期業績予想の下方修正を公表。今後も当面は厳しい需要環境が続き、これら2社以外も、通期業績予想を下方修正することが懸念される。工作機械業界は独立独歩の精神の企業が多く、M&Aが比較的起きにくい業界であるが、大手でも当面、黒字転換は厳しい状況であり、このまま需要回復が遅れれば、国内で業界再編が起こる可能性も否定出来ないだろう。このほか、建設機械業界をみてみると、8月の建設機械出荷額は808億円で前年同月比6割減。今年は前年同月比6割前後の減少が続いている状況である。
8月末の衆議院議員総選挙の結果発足した民主党政権は、国土政策については公共事業の予算削減、環境政策についてはCO2削減と、特定の政策分野では明確なメッセージを発しているものの、産業政策全般についての政策スタンスは、来年度予算の概算要求の内容や報道をみる限り、環境分野を強化する点を除けば、まだそれほど固まっていない印象を私は受けている。内閣府の機械受注統計をみると、製造業の受注高は今年に入ってから前年同月比4?5割減の状況が続いており、別途、時限的に何らかの施策を講じる必要性が今後出て来ることも有り得ると、私は考えている。機械産業は産業の設備投資に位置づけられることから、機械産業全体では今後も当面、厳しい需要環境が続くだろう。