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アナリストコラム

三菱ケミカルホールディングス白色LED、考慮すべき点 -高橋俊郎-

2009年10月09日

白色LEDが話題となっている。私の見ている化学セクターでは三菱ケミカルホールディングス(4188)の注目度が高い。ここでは、9月18日に「教えてアナリスト」で書いたことに追加して書きたい。三菱ケミカルホールディングスが白色LEDで有望かどうかと問われるならば有望であると考えている。今回は(あえて)考慮しておきたい面を書いてみたいと思う。「教えてアナリスト」では、有望の理由を3点挙げた。

(1)グループ企業の総力を挙げて事業展開を推進し、LEDビジネス分野のプレゼンスを高める。
(2)素材メーカーとして川上側の要素技術を独占する。
(3)海外子会社を利用し欧米での小売展開に加え、日本市場でも小売参入を図る。

同社は、R&Dは行っていたのだろうが(日経新聞では01年に中村修二カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授にアプローチしたと記されている)、LED素子の特許に関してはGreeから基本特許の権利獲得と同じ08年から出願が急増している。これまで、川上側の素子とその周辺に関しては、日亜化学工業、スタンレー電気(6923)、パナソニック電工(6991)、東芝ライテックなどが中心企業であったと思っている。中でも日亜化学工業が基本特許を有している点から中心企業となり、競合他社は日亜化学工業から素子を購入し、川下に当たるアプリケーションサイド(主に携帯電話や照明)でビジネス展開推進をせざるを得ない状況であった。しかし、10年に日亜化学工業の青色LEDの特許切れが迫っている。
さらに同年4月から施行される改正省エネ法では、エネルギー管理の対象範囲が事業所単位から事業者単位へと変更したため、昨年来CVSを筆頭に各企業の導入宣言が見受けられ始めた。これらの動きにより市場拡大機運も高まり現在の活況を呈している。

同社は次世代白色LEDに注力している。この製品は、高機能化・低コストと非常に訴求性が高い。しかし、現在は2インチの大きさであり、大型化には少し時間がかかるだろう。10年からの照明器具への参入は、当面既存の白色LEDを使用し、時機を見て次世代白色LEDに切り替える模様だ。次世代白色LEDは高機能、低コストと有望であるが、意識しておきたいのは現在販売が好調のネットブックがHDDからSSDへの切り替えが遅れているように、同社次世代LED販売が現行LEDの技術進展により販売が遅れることだ。ネットブックは09年にはHDDからSSDへの切り替えが行われると言われていたが、現在も主流はHDDである。徐々にSSD搭載のネットブックが主流となるだろうが、次世代白色LEDも採用が遅れることが考えられる。
また、同社は部材販売だけでは薄利多売となるため、垂直統合による照明器具の小売も想定している。小売展開が成功するならば、持分適用会社になると予想される大陽日酸(4091)のMOCVD装置から、同社LED光源、三菱樹脂のフィルム、そして照明製品販売と垂直統合により大きな利益を獲得できる。同社は10年から子会社Veratimが記録メディア販売で実績のある欧州から販売を行い、成功次第日本などでも販売予定。国内はパナソニック電工や東芝ライテック、シャープ(6753)などが販売を開始している。住宅の施工時以外の急激な伸びを予測するのならば、小売流通にいかに食い込むかが問題となる。現在の電気製品販売はヤマダ電機(9831)をはじめ特定の大型店に集中している。これらの販路にうまく食い込むこと、また、素子供給先として、最終製品で競合する電機メーカーとの絶妙な舵取りが必要となる。

以上のように、現行の青色LED特許切れによる素子開発の進展による同社素子導入の遅れ、小売成功のための流通販路の確保とブランドの確立が考慮すべき点と考えられる。

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