メニュー
アナリストコラム

株価調整後の立ち直りも、「中国関連」と「環境関連」が主導? -佐藤謙三-

2009年10月02日

前回の当コラムを執筆した7月末の時点では、10/3期1Q(4-6月)の業績発表が一部始まっていた段階ながら、担当している素材関連企業の中には期初計画を上回る企業が多く、通期業績の上振れを期待して株価は上昇、日経平均株価も年初来高値を更新するなど力強い展開だった。その後日経平均株価は、概ね1万200円?1万600円程度の狭いボックス内での動きとなっていたが、ここにきて、約2カ月振りに1万円を下回っており、素材関連銘柄も軟調な展開になっている。株価下落の直接のきっかけとなったのは円高進展の模様ながら、前回の当コラムでも触れたように、1Qの業績は会社側が想定していた以上に良かった企業が多かったものの、「中国依存度が急速に高まる中で、短期的には息切れする局面もリスクとして織り込まざるを得なくなった」という類の会社側のコメントが散見され、それが現実化したのが、今回の株価調整と私は捉えている。

素材関連企業の中で、8月以降に上方修正を発表した代表銘柄は住友金属鉱山だろう。9月7日に、2Q累計の経常利益予想を期初の30億円から280億円、通期の経常利益予想を期初の110億円から540億円に大幅に増額し、同時に、10/3期の配当予想を年5円から年14円、大幅減配予想から一転増配予想となっている。非鉄金属の価格動向等で、ある程度の業績上方修正数値が予想できたこと、1Q決算発表時に会社側は、「9月の中頃には足元の非鉄金属価格等を勘案して業績修正見通しを発表する」ことを明言していたこともあり、上方修正発表時の株価はあまり反応していない。住友金属鉱山の株価が、6月の高値1,626円(足元1,400円前後に調整)をいつ上回ってくるかがひとつのポイントとして注目している。

中国の景気対策の影響を受けた素材関連企業と、国内需要の影響が大きい素材関連企業では、業績の明暗が分かれたのも特徴。期初見通しを上回った代表が非鉄金属関連企業に対して、悪化している代表が、公共投資・民間投資とも期待はずれとなっているセメントメーカーや建材関連企業。鉄鋼メーカーでも、中国や韓国向けに輸出を拡大して、内需の落ち込みをいくらかカバーしている高炉メーカーと、建設向け鋼材のウエイトが大きい電炉メーカーでは明暗を分けている。

10月2日に発表されたIMFの世界経済見通しによると、09年の世界全体の実質成長率はマイナス1.1%、日・米・ユーロ圏ともマイナス成長となるなか、中国が8.5%成長、インドが5.4%成長予想となっている。中国経済が欧米等の他国経済の衰退を相殺しているというのが現況だろう。2010年の成長率見通しでも、世界が3.1%とプラス成長に復帰する見通しではあるものの、先進国は1%台の成長見通しであり、中国、インドはさらに成長率が高くなる予測。中国政府による景気刺激策効果が大きく、08年末頃からインフラ関連で鉄鋼や銅需要が拡大して、鉄スクラップ価格や非鉄金属価格が高騰している。足元調整気味ながら、中長期的には上昇トレンドが続くと考えてよいだろう。中国の成長は景気刺激策の影響を受けた個人消費が担っているため、自動車や電化製品の購入を促進する減税や助成政策も効いている模様。

一方国内については、中期的にはともかくとしても短期的には新政府による景気刺激策に大きな期待ができない以上、少なくとも素材関連企業に限れば、中国を中心としたBRICsの需要拡大と、環境関連需要拡大に依存せざるを得ないだろう。調整後の株価立ち直り局面で、相場を主導する銘柄がガラリと変わるとは考え難く、広義の「中国関連」と「環境関連」が相場を主導する展開を予想する。

アナリストコラム一覧 TOPへ戻る