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アナリストコラム

底打ち感の見え始めた機械産業と産業革新機構への期待 -高辻成彦-

2009年08月14日

昨年9月のリーマンショック以降、機械産業には厳しい経済状況が続いていたが、今年に入ってから一部ではあるが、底打ち感が見え始めて来たようだ。

(社)日本半導体製造装置協会が発表している日本製SPE(半導体製造装置)の受注高(3カ月移動平均値)は、今年3月を底に3カ月連続で上昇。ようやく受注減に底打ち感が出てきた。また、内閣府が発表している機械受注統計においても、産業用ロボットについては今年2月を底に回復基調のようだ。(社)日本工作機械工業会が発表している工作機械の受注高は、今年1月を底に回復基調だが、7月は6月よりやや微減。今のところこれらの分野の回復の牽引材料となっているのは、概ね中国を中心としたアジア地域での受注のようであり、その回復の力はまだ非常に弱いものだ。

また、機械産業の全てが回復基調とは言い難いようだ。(社)建設機械工業会が発表している建設機械の出荷額は、6月までで内需は15カ月連続の減少、外需は8カ月連続の減少。総合計でも9カ月連続の減少であり、建設機械では減少傾向にまだ歯止めがかかっていない模様だ。

機械業界は産業の設備投資に位置付けられる業界であり、景気動向に左右されやすいと私は考えている。全体的に市場規模が昨年に比べ大幅に減少している現状からは、機械業界各社の業績が急回復することへの期待感は持ちにくいが、底打ち感のある分野が出て来たことは明るい兆しであり、もうしばらくすれば、業績回復が顕著な分野も出始めるのではないかとみている。

このほか、私が現在、注目しているのは官民ファンド「産業革新機構」の発足である。

今年4月成立の改正産業活力再生特別措置法に基づき、7月27日(月)に発足を迎えたが、7月25日(土)付けの日本経済新聞(朝刊)情報などによると、日本政策投資銀行やパナソニック(6752)、武田薬品工業(4502)など16社が出資しているようだ。

同ファンドは、技術力のあるベンチャー企業や、大学の特許の事業化などのベンチャーキャピタル業務を目的としているほか、同業他社の特定部門を一本化する業務も行うようであり、国内の事業再編投資も手がけるものと思われる。そもそも官主導の投融資が必要か、という議論があるが私は、1)経済的なセーフティーネット網(雇用対策や中小企業支援など)、2)将来的に日本経済の成長に寄与する可能性があるが、現時点では採算が取れない研究開発の支援、については少なくとも是とする立場である。民間のみでは採算性の観点から手掛けることが難しいからだ。出資者でもある日本政策投資銀行と業務がどう違うのかが気になる上に、国主導で事業再編を手掛けることには、議論の余地がある。しかし、今の経済状況において国内で事業に投資する存在が増えることは日本経済にとっては明るい材料であり、同ファンドがさまざまな研究開発事業の成果の一助となり、ひいては日本経済にとってプラスになることを期待したい。

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