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アナリストコラム

化粧品(メーキャップ類)は景気回復の先行指数となるのだろうか?-高橋俊郎-

2009年08月07日

少し古い記事であるが、日経新聞7月12日(日)エコノ探偵団「なぜ化粧品だけ不況知らず」という記事があった。見出しには「外食減らしてもオンナ磨き」、「戦前の恐慌時も市場拡大」など。最近、化粧品も担当しているため興味深く読んでみた。タイトルを見た瞬間は、認識と若干のズレを感じた。個別企業では業績堅調な企業もあるが、総じて主力の中価格帯品(ドラッグストアなどで販売されている3,000円前後の製品)は不調である。

読み進めると百貨店は不振と書いてある。確かに百貨店は不振であり、日本百貨店協会の直近の6月全国百貨店売上高概況でも化粧品は売上前年比7%減で7カ月連続マイナスを記録。さらに経済産業省の化学工業統計による5月の化粧品出荷実績(金額)は1,007億円(前年同月比16%減)、数量ベースでも10%近く減少している。さらに_ユーザベースの企業・産業ファンダメンタル分析に使用する「SPEEDA」でも化粧品業界を見てみる。電機や自動車業界などに比べると、おそらく必需品度合いも強いからであろう、業績は底堅い。しかし、ドラッグストアへの販売一巡など成長率が落ちてきているため、株価の期待値が低下傾向なのだろう。直近6カ月で業界指数はTOPIXに対し20ポイント程度アンダーパフォームしていた(2年前からではアウトパフォームしている)。口コミや100円ショップのことも書いてあったが、いまいち、しっくりと来ない内容であった(私の視点が会社業績と株価に偏っているからだろう)。 

その中で最も興味を引いたのは化粧と経済状況の関係の図表であった。高度経済成長期にはオードリー・ヘプバーン風の太い眉、バブル期も太い眉、90年代後半の金融危機は安室奈美恵さんを真似た細い眉、という風に経済環境とメーキャップ化粧品の流行には相関がありそうと思わせる図表であった。そこで、以前、『理詰めのトレンド予測』(秀和システム)を読んだことを思い出した。内容は、㈰流行の原因には「特定要因」と「循環要因」がある、㈪「アリ型人間」と「キリギリス型人間」は交互に現れる、㈫「同一視」と「対立視」を知って流行を読む、など。モノを見る際の良い視点を与えてくれる本であった。確かにモノ自体の最終目的や機能は大きく変化しないため、「ズレ」を利用したり、「循環」をうまく使うことが流行らせる秘けつなのかも知れない。

そこで、今後の化粧品の流行はどうなるのかを想像してみた。理詰めで考えたわけではなく、感覚であるが、単純に現状とは逆の方向性になると想定。 現在、スキンケアは自然派な「体に負荷の掛からない」製品が流行っているため、逆のものが流行る、もしくは付けなくなる。問題はメーキャップ用品の流行である。最近の女性の眉が細いのか太いのかが分かりにくいが、景気回復に合わせ太くなっていくと想定。そう考えると、最近TVでよく見かける「イモト」という女性芸人の顔が浮かんできた。

既に人気もありそうなことから、景気は回復傾向?に向かっていると変な理屈を考えたりもしたが、冷静に考えると、化粧品は遅行性傾向の製品と思われる・・・しかし、変なところで景気回復の一端を確認できたような気分になった。

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