メニュー
アナリストコラム

10/3期1Qの決算発表始まる -素材関連の業績は総じて上振れているが一部警戒感も -佐藤謙三-

2009年07月31日

10/3期1Q(4-6月)業績の発表が始まった。担当している素材関連企業や食品(一部)の中で、本日(7月31日)までで約3分の1の発表を終えたが、期初計画を上回っている(1Qの収益予想は発表しない企業が多く、上期や通期予想の進捗度等から推定)企業が多い。一部では、10/3期1Q業績の回復が鈍いことが嫌気されて株価が8月にかけて調整する、いわゆる「株式市場の8月危機説」もささやかれていたが、企業業績の面ではその兆候はなく、危機説も鳴りをひそめている。 当初から予想されていたといえども、一時的要因が大きく、高炉メーカーの1Qは軒並み大幅な経常赤字となっている。また他の素材関連企業も、08年の上期が業績のピークとなっている企業が多いため、前年同期比では大幅な減益となっている。そのため、株式市場の地合いによっては調整する局面も十分考えられた。「株式市場の8月危機説」は、少しでも株価の安いところを拾いたい「買いたい弱気」の投資家が流した説のようにも思えるが、期待?に反して、本日も日経平均株価は年初来の高値を更新している。 まだ全体像を把握できるほどの決算発表は終えていないが、現在までの素材関連企業の業績発表及び通期の業績予想を見ると、中国の影響が非常に大きくなっており、1Q業績の上振れの大半が、中国を中心としたアジアの需要回復が原因になっている。 1Q業績は総じて期初計画を上回っており、直近(7月下旬)までの動きを見ても、2Q業績はさらに1Qよりも良く、少なくとも上期の業績は計画を上回ることは確実な状況。しかし意外に今回は、各企業は通期業績予想の上方修正をためらっている。上方修正をしない理由を明らかにしている訳ではないが、中国の需要拡大等に関して、中・長期的には強気姿勢を変えていないながらも、短期的に警戒を強め始めたように思える。 GDP上位10カ国でプラス成長をしているのは中国だけであり、中国経済が欧米等の他国経済の衰退を相殺しているというのが現況だろう。中国政府による総額4兆元(約56兆円)の景気刺激策効果が大きく、08年末頃からインフラ関連で鉄鋼や銅需要が拡大して、鉄スクラップ価格や銅価格が安値から2倍に高騰している。また、中国の成長は8割以上が景気刺激策の影響を受けた個人消費が担っているため、自動車や電化製品の購入を促進する減税や助成政策も効いている。わが国の素材関連企業全般の感覚では、4月頃から液晶やIT関連の環境が良くなり、6月頃から自動車向け需要の拡大が見られ、足元の7月は1Qよりも加速している模様。 非鉄金属価格高のメリットを受ける非鉄金属各社の上期業績も期初計画を上回る可能性が高く、遅くとも9月頃までには上期業績の上方修正は発表すると思われる。しかし非鉄金属価格についても、ヘッジ比率を引き上げる企業が出始めている。 中・長期的には、足元の積み上がった銅等の在庫水準が心配されるほど中国の需要は小さくないという見方では一致している模様ながら、米国の景気回復がない片肺飛行では、短期的には息切れする局面もリスクとして織り込まざるを得なくなったというのが現状か。

アナリストコラム一覧 TOPへ戻る