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アナリストコラム

スーパーではレジを観察しよう! -坪井信行-

2009年07月10日

スーパーで買い物をする機会があったら、ぜひ、レジを観察して欲しい。観察といっても、レジを打っている人の容姿を見るのではなく、その仕事振りを見るということだ。仕事振りといわれても、余りピンとこないかもしれない。もっと具体的にいえば、お客様一人に、どの程度の時間をかけて処理しているのかということだ。基本的には、できる限り素早く処理することが望ましい。もちろん、闇雲にスピードだけ速くても、商品の取り扱いに丁寧さが欠けていれば、顧客満足度が低下してしまうので限界はある。
丁寧さを損なわない限界のところまで、処理速度を上げていくことがレジ担当者に求められるスキルである。私はスーパーで買い物をする際、レジの混雑度と処理速度をいつもチェックするようにしている。レジの通過に時間がかかるようなら、買い物を急ぐ必要が生じるからだ。

さて、小売業の売上高というのは、以下のように分解できる。
売上高=顧客数×顧客単価=顧客数×個品単価×買上点数ごく当たり前の式である。要するに、より多くのお客様にご来店頂き、より多くのものを買って頂くことで、売上高は増大していく。個品単価については、できるだけ高いものを買ってもらいたいのは当たり前だが、業態や経済情勢に左右される面が大きいため、小売業者側で必ずしもコントロールできるわけではない。とすれば、いかに多くのお客様に沢山の買い物をしてもらうのかということが、小売業における業績ドライバーということになる。

お客様の数を決めるのは、どういった要因であろうか。地域の人口(集積度)や競合店舗の存在などは重要な要素である。加えて、当該店舗の規模が大きく影響する。収容能力には限界があるからだ。
スーパーの場合、売り場面積はもちろん重要である。しかし、良く観察すると、大抵の場合、ボトルネックとなるのが、レジの処理能力である。お客様が売り場に入りきれなくなる前に、レジの処理能力が限界を迎えてしまう。このボトルネックを解消しないと、店舗の売上高を伸ばすことはできない。また、私もそうだが、多くの人は、レジ通過に時間がかかると見ると、買い物を素早く済ませようとする。結果的に買上点数も伸びなくなる。逆に、レジが多少混んでいたとしても、処理速度が十分に速ければ、買い急ぐ必要はないため、買上点数が伸びる可能性が高い。
こうした心理的な影響も含めて、レジの処理能力というのは、スーパーの業績を左右する重要な要因である。

この面で特筆すべき食品スーパーが存在する。東証2部上場のオオゼキ(7617)という企業である。オオゼキは、東京の城南地区を中心に30店舗を展開する食品スーパーだが、非常に高い収益性と安全性を誇る企業である。2009年2月期には、ROE12.7%、ROA16.7%といずれも高水準を維持し、自己資本比率77.3%で有利子負債残高はゼロである。食品スーパーとしては、異例の営業利益率7.7%を誇っている。成長性の面でも、名目GDPが大きく落ち込む中、売上高2.7%増を新規出店なしで達成している。2010年3月期に関しても、会社側は、3.9%増収、4.1%営業増益を見込んでいる。
東京近郊にお住まいの方は、ぜひ一度オオゼキの店舗に足を運んで頂きたい。レジの処理速度に驚かされるはずである。しかも、取り扱いの丁寧さは犠牲にされてはいない。オオゼキのレジ要員の多くは正社員で、徹底的な訓練と指導を受けていると聞く。現場では、やる気とサービス精神が溢れる印象である。

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