メニュー
アナリストコラム

総合化学業界まとめのあと -高橋俊郎-

2009年06月12日

先日、佐藤シニアアナリストと総合化学業界をまとめた。一般的に総合化学会社と呼ばれている、三菱ケミカルホールディングス、住友化学、三井化学、旭化成、東ソー、昭和電工の6社である。レポートはエチレンセンターの再編が始まりそうだという内容。今回はレポート内からこぼれざるを得ない話や、業界の雑感について書いてみたい。再度、業界レポートを読んで頂けたら幸いである。

-三菱ケミカルホールディングス小林社長の力技-

三菱ケミカルホールディングスの社長である小林善光氏は、説明会でもエチレン再編の状況を「耳を引っ張ると盲腸が痛いという人が出てくる」と発言するぐらい、複雑怪奇に様々なことが絡み合っていることを示唆していた。小林社長は昨年の日経産業新聞での数回に亘る特集で、社長室で蛙を飼育しているようで、このままではゆで蛙になってしまうと危機感を明確に出していた。二次情報でしか存じ上げないのだか、研究者であり、且つ、光ディスク事業を成功させた手腕により社長となられたようだ。いわゆる石化事業の本流?でなかったことから、また理解者がいるからこそ、大胆に発言、行動がとれるのかとも考えてしまう。具体的内容、実行までには3年程度かかるようだが再編の1歩として注目である。

-アジア企業との連携-
Sinopec(中国石油化工)をはじめ、日本の大手企業がアジア企業と提携することが多くなった。半導体業界で起きたような技術流失の危険もあるものの、いずれ誰かが、という状況になり海外大手企業が技術力を付けるのは時間の問題。既に企業は日本国内ではなく「アジア国内」とも言うべき感覚で事業を考慮しているのだろう。その際には海外の有力企業との提携により販路を確保しておくことが重要になる。これまでのように、国内の余剰樹脂を、やや低価格でアジアへ輸出するといった流れではなく日本の技術を利用し、ネクストマーケットへの市場開拓が肝となるのだろう。

-日本の技術はすごいものが沢山あるという一例-
日本国内では当たり前にPETボトル飲料に巻かれている派手なフィルム。このようなフィルムは日本だけだが、この樹脂を製造できるのは旭化成と電気化学工業。一般的にSBC樹脂(スチレン系特殊透明樹脂)などと言われている。旭化成は「アサフレックス」、電気化学工業は「クリアレン」。世界的にはシェブロンフィリップス化学の「Kレジン」が有名だがハンガー用途などが多い。様々な形状のPETボトルにうまく密着できる熱収縮性を持った樹脂は日本の2社が圧倒的。海外では、紙ラベルでよい、低価格なPVC(塩ビ樹脂)でよいといった、ラベルにはコストを掛けたがらない事情もあるようだが。日本だけという技術は樹脂の世界でも多い。

-原油価格はどこまで上がるのか-
最近読んだ本で原油価格を考える上で興味深い本があった『地球最後のオイルショック』デイヴィッド ストローン著(新潮選書)である。まあ、世の中には100人100通りの正義があるわけであり、内容の正誤については不明であるが、非常に有意義な本であった。色々な立場からの本を読み、取材をして考える(太陽電池の代替費用なども)。その結果、やはり価格は需要と供給との間を発散と収束をまたぎながら、消費者物価指数などを利用した、90ドル/バレル前後が最高値、平常時は60ドル/バレルが妥当ではないかと現時点では考えている。

アナリストコラム一覧 TOPへ戻る