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アナリストコラム

REITの個人投資家持ち株比率が反転 -堀部吉胤-

2009年05月01日

REITはそもそも個人投資家向きの商品だが、2001年9月に2銘柄が最初に上場して以来、ほぼ一貫して個人投資家の持株比率は低下してきた。2005年頃までは資金運用難に苦しむ地銀が持株比率を上昇させ、その後、新BIS規制の導入から地銀が後退する一方、世界的な金余りを受けヘッジファンドなど外国人投資家の比率が上昇。2007年夏以降はサブプライム問題の深刻化とともに外国人投資家の持株比率が低下傾向となる中、3月、4月に決算を発表したREITでは、個人投資家の持株比率が、総じて半年前と比べ上昇した。投資口価格が急落し、分配金利回りが急上昇したことに個人投資家の関心が高まったためといえよう。

2007年、2008年の東証REIT指数急落の主因となったリファイナンスリスクは低下傾向にある。REITは基本的に純利益の100%が分配金として外部流出し、内部留保は減価償却費に限られるというレンダーの立場からは構造的な問題を抱えている。リファイナンスリスクは昨年10月のニューシティ・レジデンス投資法人の民事再生法適用申請で顕在化したが、昨年12月に政府が「住宅・不動産市場活性化のための緊急対策」を打ち出すなど、実効性はさておき政府、日銀がREIT市場に流動性を供給する姿勢を示したことから、金融機関は基本的にリファイナンスに応じる姿勢となっており、借入金の返済が年間で最も多い3月を何とか乗切った。さらに4月7日にニューシティ・レジデンス投資法人のスポンサーが決まり、投資法人債を含め負債は全額弁済されることになったことも金融機関のREITへの融資姿勢を緩和させることになった。それでも物件取得のためのニューマネーの供給までは至っていない。こうした中、今年の9月からは投資法人債の償還が本格化する。投資法人債を発行できる環境にはなく、借換えに頼らざるをえないが、金融機関にとってはニューマネーの供給になるためハードルは低くない。4月10日に決定した「経済危機対策」にREITへの流動性供給対策が盛り込まれたり、REITの資金繰りを支援する「官民共同投資ファンド」の設立構想が持ち上がるなどしているものの、投資法人債の償還問題が完全に払拭したとまでは言えない。

3月中旬以降、過度な信用不安の後退に伴い株式市場が反転する中、東証REIT指数も反転している。特に、ニューシティ・レジデンス投資法人でデットの毀損がないことが明らかになったことを受け、スポンサーの信用力の低い銘柄の上昇が著しい。また、空室率悪化、賃料のピークアウトが顕著になったオフィス系が冴えない一方、キャッシュフローの安定性の高い住宅系がディフェンシブ性を発揮し堅調。資金調達環境、不動産のファンダメンタルズの最近の動向は投資口価格に的確に織り込まれてきたといえよう。

こうした中で、今後のREITの銘柄選択はどうすればよいだろうか?足元の分配金利回りは、スポンサーの信用力により分類すると、最も信用力の高い2銘柄が5%台、特に問題がないとみられるグループが6?8%台、低いグループが9?17%台となっている。投資法人債のリファイナンス問題が残ることや、借入金返済のために投売り的に物件を売却した場合の売却損の可能性を考慮すると、やはり一定のスポンサーの信用力があり、含み益が残っている銘柄が望ましいだろう。
また、オフィスや商業施設のファンダメンタルズは当面悪化傾向が続くとみられる一方、住宅系のオフィス系に対する割安感も薄れたことから、総合型を選択するのが無難と考える。外部成長が期待できない中、ファンダメンタルズは悪化傾向のため、7%以上の分配金利回りは欲しいところだ。こうした要件に合致する銘柄としては、ユナイテッド・アーバン投資法人(8960)を挙げることができよう。

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