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アナリストコラム

携帯電話端末、販売動向の見通し -鈴木崇生-

2009年03月27日

各キャリアとも携帯電話端末販売台数の減少が続いている。出荷台数も連動し、JEITA(社団法人電子情報技術産業協会)が発表したところによれば、1月の携帯電話端末の出荷台数は前年同月比47.8%であり、7カ月連続で減少したとのことだ。4月から1月までの累計では前年同期比72.1%である。携帯電話端末の販売や出荷が減少していることは何度も報道されていることで驚くには値しないだろう。むしろ私は、意外と売れているとの感想を抱いており、その概要と共に来期以降の販売動向の見通しについて触れてみようと思う。

携帯電話端末を2台持ちたいか、あるいは必要かと問われた際に、多くの人が不要と答えるだろう。なぜならば、必要であるのならば携帯電話市場が成長していた段階において既に一定数の人が2台以上持ったと考えられるし、1人1台の時代を迎えて市場が飽和あるいは成熟とは言わない筈である。また、NTTドコモの2in1やソフトバンクモバイルのダブルナンバーのように1台で2つの番号を持てるサービスはもっと普及してよい筈だ。しかしながら、上記の2点は現在の市場を見る限り当てはまらないと言える。よって、市場はひとまず成熟したと結論付けられる。新規契約を獲得するという点において、携帯電話端末が依然と同じように売れ続ける訳がない。

市場の成熟は各キャリアも認識していると言えよう。競争戦略に基づけば成熟産業が成長するためにはコスト削減と買収という道筋が残されている。真っ先に目をつけたのが販売奨励金という日本独特のコスト負担であり、携帯電話端末の割賦販売という手法を絡めてこの削減へ各社とも乗り出した。この割賦販売には選択肢があり一括払いも出来るが各社資料及びヒアリングからすれば大概が24回払いを選択している。分割支払いを選択した場合、途中で解約ないし買い換えるのには清算や違約金の支払いが必要となる。これを期間拘束と呼ぶことがあるが、つまるところ違約金を支払ってまで買い換えるインセンティブは働かないため、当然にして買換えの減少から携帯電話端末の販売台数も減る。

各キャリアの資料から買換え率が低下していることは読み取れるのだが、そもそも今述べたように買い換えることに対してインセンティブが働かない層を母数に含めての数字であり、低下は当然と言えるだろう。そこで各社資料やヒアリングなどを元に期間拘束を受けている層を分母から除外し、その上で修正した買換え率を算出してみると、概ね各社共に3%程度という結果が現れた。月ごとの凹凸や、そもそもファミ割や誰でも割などの四半期末契約数が開示されていないため推測の域を出ないわけだが、この数字は期間拘束が始まる前の買換え率と大差がない。つまり、報道にあるように店頭での端末価格が上昇したから買い控えているという意向など影響はあるにせよ、買い換えること自体に対するユーザーの意欲は総じてあまり衰えていないと思われる。MNPによる転出入数が導入当初に比べて格段に減少したとはいえ、ソフトバンクモバイルのユーザーの期間拘束が一部解けだしたこともあり、MNPによる獲得を目指して販促を行うのは至極合理的な戦略と言えるだろう。ただし、MNPによる転出入に関しては、ケータイ白書から読み取れるように多数のユーザーは自キャリアに対して相応に満足しているため、これから大幅に増加することはないというのが私の見解ではある。

端末の販売動向に関してはNTTドコモ、KDDIの両キャリアが割賦販売による携帯電話端末の期間拘束や割引プランによる電話回線の期間拘束を始めてからまだ2年が経過していないため、総じて見れば10/3期一杯も減少トレンドは続くだろう。最低限前期比10%は落ち込むと予想している。各キャリアの期間拘束が解かれる11/3期には増加へ転じ、それに連れて出荷台数も増加すると予想している。出荷台数で言えば、13/3期には4,000万台前後になるというのが私の見解だ。

では携帯電話端末メーカーにすれば10/3期を乗り越えれば業績は回復へ向かうかというと、私は決してそうは思わない。ロットのかけ方、開発体制が変容してきており、事業の統廃合や撤退は起こり得ると考えている。この見解についてはまたの機会があればとしたい。

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