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アナリストコラム

意外に悪くない建設業界 -堀部吉胤-

2009年03月06日

西松建設がアジアでの受注活動のために捻出した裏金を国内に還流させた外為法違反問題は、民主党小沢代表への迂回献金問題に発展。古い話を蒸し返した政治的な臭いのする話ではあるが、業界の古い体質が未だに残っていると投資家に受け取られかねず、建設株全般にとってマイナスといわざるをえないだろう。製造業の設備投資が急激に冷え込んでいることや、不動産開発事業の事業環境が悪化していること、マンションディベロッパー破綻に伴う工事代金の回収不能による中堅ゼネコンの連鎖破綻もあり、建設業界は先行き不透明感が高まっているように思える。

しかし、少なくともスーパーゼネコンに限れば、10/3期に利益水準自体は高くないにせよ、営業増益が見込めることもまた事実である。主な増益要因としては、(1)海外不採算工事の影響の緩和(中東の大型不採算土木工事に対して08/3期、09/3期に工事損失引当金を積み損失を先取りしたことによる)、(2)国内の工事利益率が選別受注による受注時採算の改善や資材価格下落により、08/3期を底に緩やかな改善が続く見通しであること、が挙げられる。受注環境の悪化は懸念材料であり、実際、製造業では工場建設の延期・中止・中断が相次いでおり、09/3期の受注計画を下方修正した会社が多い。凍結状態の製造業からの発注がいつ動き出すか全く目処が立たない状況だが、非製造業では10/3期に大型の再開発案件が目白押しであることや、公共工事が追加経済対策などにより底堅く推移すると見込まれることから、少なくともスーパーゼネコンに限れば、10/3期の受注高は09/3期比10%前後の減少で済むのではないかと考えている。そうであれば、10/3期業績への影響は限定的だろう。

民間設備投資急減による工事量減少が再び価格競争を引き起こすという見方もあるが、各社ともこれまでの学習効果から選別受注の姿勢を崩すことはなさそうであり、建築の工事利益率が08/3期のように3%台、4%台まで落込むことは2度とないと考えている。11/3期も引続き国内の工事利益率は緩やかな改善傾向を維持しよう。10/3期の受注減少の影響が11/3期に本格的に表れてくるため、11/3期業績が増益になるかは微妙なところだが、大きく崩れることはないと考えている。11/3期の受注は非製造業が大型再開発案件の一服で反動減になる可能性が高いと思われるが、製造業が持ち直してくることが期待され、相殺されるのではないだろうか。不動産開発事業の環境も既にこれ以上悪くならないところまできているとみられ、開発利益が上向く可能性もあろう。他の産業などに比べれば、スーパーゼネコンの業績の安定度はかなり高いといえるだろう。

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