担当の輸送用機器セクターには造船から自動車、自動車部品と物を運んだり、人が移動したりの手段を製造する企業が幅広く含まれる。ご存知のように同セクターに属する企業の業績は米国発金融危機を境に殆どが大きく落ち込んだ。業績予想下方修正が相次ぎ、トヨタですら09/3期は赤字に転落する見込みだ。各社とも来期の予算がなかなか立たずの状態で減産、人員削減などと暗いニュースには事欠かない。こんな中でそこそこ元気なのが自転車だ。自転車部品のシマノの08/12期の業績は2桁営業増益と好調だ。今期09/12月期の会社見通しは残念ながら減速だが高水準の利益を確保する見込みである。
そこで今回は自転車に注目し自転車に関わる統計を拾ってみる。以下(財)自転車産業振興会の全国小売店(各車種を一通り取り扱う、従業員が3人までの店舗)を調査対象とした国内販売動向調査から自転車販売の最近の動向を探ってみた。昨年末の4カ月間を振り返る。調査店1店舗当たりの販売台数を前年と比較した。全体(中古車を含む)では9月が前年同月比110(10%増を意味)→10月109→11月94→12月91となる。同様に車種別に見ると構成比で4割を占めるホーム車が9月103→10月109→11月87→12月92、マウンテンバイクが9月100→10月86→11月117→12月117、スポーツ車は9月200→10月214→11月150→12月110、最後に電動アシスト車が9月119→10月100→11月82→12月100という結果となった。ここから全体では販売は鈍化しているものの、マウンテンバイクやスポーツ車の堅調ぶりが目を引く。また電動アシスト車はガソリン高が追い風となった昨年の反動があるが底堅く、全体での鈍化はホーム車の影響が大きいことに気が付く。
ホーム車には景気悪化の影響が及んだと推測される。価格帯別の販売動向では低価格帯が低迷する一方で高価格帯は伸びておりこれを裏付ける。それではスポーツ車などホーム車以外はトラックや四輪、二輪とあらゆる乗り物の販売が大きく落ち込む中で、多少鈍化は見られるが何故堅調なのだろう。小生は環境と健康志向の高まりがベースにある中、(1)二輪駐車規制の強化(特に原付に影響)の動き、(2)クルマ離れに伴う一部自動車からの流れ、(3)中期的なガソリン価格高騰への懸念、(4)電動自転車の価格低下と性能向上によるバリューアップなどが背景にあると考える。
欧州では中核都市で行政による自転車利用促進の動きが高まっている。パリでは大規模な自転車レンタルサービスが定着したと聞く。納税者負担ゼロで利用者(市民や観光客)の負担も軽く、交通渋滞解消に役立っていると言う。オリンピックを控えたロンドンでは混雑税導入で都市部への車両流入を抑制し、一方で自転車利用を促進しており他の都市にもこの動きが広がりつつあるようだ。また、国内では松本市などで乗り捨て自由な自転車利用制度が導入されている。環境、健康志向の継続的高まりとこうした世界的な行政の環境への取り組みも相俟って自転車への需要は今後も着実に増加していく可能性があり、自転車関連の産業は地味ではあるが環境との関連で注視して行きたい。