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アナリストコラム

不動産マーケットは全治1年? -堀部吉胤-

2008年11月07日

不動産業界の両巨頭である三井不動産、三菱地所の第2四半期決算が発表され、両社とも通期の業績予想を下方修正した。下方修正幅は経常利益で両社とも約100億円。想定の範囲でサプライズはない。下方修正の主因は、両社ともフロービジネスのマンション分譲と仲介の不振。一方、ストックビジネスのビル事業は若干ながら上方修正されている。空室率はマクロ的にみると景気減速を受け昨年11月から上昇基調にあるが、都心Sクラス物件が主体の両社ではほとんど悪化していない。賃料改定も順調で平均賃料は緩やかな上昇が続いている。まだ今後2年程度は賃料上昇が続くとの見解だ。もっとも、足元の賃料の増額改定は2003年問題頃に非常に安い賃料でリーシングした定借のテナントが賃料改定期を迎えていることに支えられており、実体経済の悪化が懸念される現状で楽観は禁物だろう。

ともあれ大手総合不動産会社はビル事業の安定したキャッシュフローにより、資金繰りに全く問題がない。片や今世紀に入って雨後の筍のように上場し、昨年夏頃まで我が世の春を謳歌していたマンションディベロッパーや不動産ファンド運用会社の多くは、デットの調達環境悪化と不動産価格下落を受け、資金繰りに追われる日々を送っている。10月も資金繰り破綻が続き、9日にはレジデンスに特化するニューシティ・レジデンス投資法人がREITとして初めて破綻した。10月半ばに返済期限が到来する45億円の借入金のリファイナンス及び10月末にフォワードコミットメントで取得予定だった豊島のタワーマンション277億円の調達の目処が立たなかったことによる。

10月末に底打ちした感のある株式市場の中でも、ほとんどの不動産ファンド運用会社やマンションディベロッパーの株価は沈んだままだ。PBR0.1?0.2倍台はざらで、それ以下も散見される。ここまでバランスシートは痛んでいないと思われる会社も多く、買収が活発化すれば潜在価値が顕在化するのだが、買い手は極めて限られ、買収事例はオリックスによるジョイント・コーポレーションなどわずかだ。9月30日にはパシフィックホールディングスの資本参加に基本合意していた大和証券グループ本社が単独での出資は行わないことを表明し、事実上、ご破算になった。三菱地所もこうした会社にスポンサーとして投資するよりも、実物不動産の取得を優先する方針だ。

破綻しそうな会社の整理はかなり進んだとみられるが、まだ、散発的に破綻は起きよう。やはり、不動産ファンド運用会社よりもキャッシュフローの安定性が低いマンションディベロッパーの方が厳しいだろう。最近、マンションのモデルルームの見学に訪れたが、リーマン・ショック後のマンション販売の不振は深刻のようだ。ゴールドクレストのような例外を除き、大京をはじめ軒並み業績予想の下方修正を発表している。10月30日に発表された政府の新経済対策や日銀の利下げにより、金融機関の不動産融資姿勢が少しでも緩まることが期待されるが、クレジットコストが増加する中、新たなリスクをとりに行く金融機関は限られよう。不動産業界の危機的な状況はあとどれくらい続くのだろうか? 三菱地所の社長が「不動産マーケットは全治1年」と決算説明会で発言したように、多くの不動産関係者は1年と思っているようである。あと1年耐え忍ぶことができた会社は残存者利益を得ることができよう。

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