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アナリストコラム

原油が高騰するに連れ、地球温暖化防止の声が高まるに連れ

2008年09月12日

大豆、小麦、木材、家庭ごみ・・・。サトウキビ、トウモロコシ、パーム油、これらは全てバイオマス(再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの)といわれるものである。原油が高騰するに連れ、地球温暖化防止の声が高まるに連れ、代替エネルギーとして関心が集まるバイオ燃料の原材料だ。バイオ燃料というと、とうもろこしやサトウキビなど糖質/でん粉を含んだものを発酵させて製造するバイオエタノールが主流であるが、欧州やインドネシアではパームや菜種など植物油脂を使用したバイオディーゼル燃料も普及している。農林水産省発表の「海外食糧需給レポート2007」によれば、2007年のバイオエタノールの生産は世界で約6千3百万キロリットル(2000年比2.1倍)と増加しており、米国及びブラジルでの生産が世界の7割強を占める。

米国では2005年のエネルギー政策法の成立後、石油の中東依存脱却及び環境問題等を目的にバイオエタノールへの関心が高まり、原料となるトウモロコシの需要も拡大した。2005年には4,100万トンだったものが、2006年に5,400万トンとなり、2007年には8,100万トン(推定)となった。2004年頃までは、全需要中6割が飼料用として使われ、バイオエタノール用は1割にしか過ぎなかったトウモロコシが、2016年に全需要の4割程度がバイオエタノール用となるとの試算もある。
また、ブラジルでは1930年代以降サトウキビからのバイオエタノール生産とガソリンとの混合が実施されており、世界最大の輸出国でもある。最近ではサトウキビの半分以上がバイオエタノール生産に仕向けられている。また、同国内ではフレックス車(ガソリンとバイオエタノールが任意の混合割合で走行できる乗用車)の普及に伴い生産量は拡大し、今後もサトウキビ増産のため作付け面積の拡大を図る方針を固めている。

一方、国内の取り組みはというと、2002年の「バイオマス・ニッポン総合戦略」により、(1)地球温暖化の防止、(2)循環型社会の形成、(3)競争力のある新たな戦略的産業の育成、(4)農林漁業、農産漁村の活性化を目的としてバイオマスの利活用が始まった。「バイオマスを燃焼すること等により放出されるCO2は生物の成長過程で光合成により大気中から吸収したCO2であることから、理論上は大気中のCO2を増加させない。」との号令と共に、2010年度までに(1)バイオマス熱利用原油換算308万キロリットルの導入、(2)500市町村程度でのバイオマスタウンの構築が定められた。

特段、バイオエタノールやバイオディーゼルに関しては、北海道のてん菜や小麦を使った官庁による実証事業を始め、大成建設(1801)、丸紅(8002)、三井造船(7003)、新日鐵エンジニアリングなど民間企業での取り組みが行われている。
環境省も現行のE3規制(ガソリンのエタノール混合率上限を3%以下と規定)をE10規制(バイオエタノール混合率が10%と規定)へと緩和したい考えだろう。
また、2008年5月に農林水産省から発表された「21世紀新農政2008」では国産のバイオ燃料を現在の生産量である数千キロリットルから2011年までに5万キロリットルまで引き上げたいとしており、2030年には大型バイオマスプラントの着工・稼動により年間の生産量600万キロリットル(国内のガソリンの年間消費量約1割)を目指す方針だ。稲わらや間伐材等のセルロース系のバイオマスを効率的に収集し、非食用資源からのバイオ燃料製造も進められている。

今、国内の耕地面積(万ヘクタール)は600(1965年)→557(1975年)→538(1985年)→504(1995年)→469(2005年)と縮小傾向は加速し、農業就業人口も1965年の1,151万人から335万人へと激減している。そんな中、2008年7月現在のバイオマスタウンは153市町村と増加しており、バイオ燃料の製造拡大も将来的にも期待ができる。このバイオマスの利活用の推進が国内農業の減退の防波堤になるかどうかは判らないが、一助になればとただ願うのみである。

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