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アナリストコラム

次世代太陽電池(色素増感型太陽電池) -藤根靖晃-

2008年07月04日

このところ太陽電池関連のニュースが続いている。
先週、経済産業省が太陽光発電の住宅導入に関する費用補助の計画を発表したことを皮切りにして、30日の日経夕刊で、昭和電工などの色素増感型太陽電池、産業技術総合研究所の非シリコン系(CIGS)太陽電池の実用化、2日の日経朝刊1面では昭和シェル石油の太陽光発電パネル工場建設が報道されている。原油価格の高騰を端に代替エネルギーへの取り組みに注目が集まっているのは言うまでも無い。既に実用化されている結晶Si、薄膜Siにおいては、量産効果と変換効率の向上によってコストダウンを図ってゆく計画であるが、資源ナショナリズムが世界中で進む中において、シリコンの供給不足が懸念される。その結果、非シリコン系太陽電池の技術開発が加速しつつあるようだ。

コストやモジュール変換効率の点から次世代太陽電池として、経済産業省の「技術戦略マップ2007」によれば、化合物結晶系、薄膜CIS系、色素増感型が挙げられている。経済産業省では、2030年に7円/kWhの発電コストを目標に掲げており、ロードマップの中で技術的課題を示している。経済産業省のロードマップでは「色素増感型太陽電池」の実用化は2020年以降と見込まれており、これまであまり注目をされてこなかったが、”相次ぎ実用化 昭和電工など”と報じられたこともあり、一躍脚光を浴びそうだ。

以下は、「化学経済7月号」(化学工業日報社刊)に掲載された東京理科大学 荒川裕則教授の解説を抜粋・要約したものである(文責:藤根)。化学系企業から”隠れ太陽電池銘柄”が今後も続々出てくる可能性が示唆されよう。

「色素増感型太陽電池」は、酸化チタンペーストを印刷塗布して焼成した薄膜電極に色素を固定した導電性ガラス基板と、白金を蒸着した導電性ガラス基板との間で電子をやりとりすることによって光電変換を行う。従来のシリコンや化合物半導体とは材料、構造、発電原理が全く異なる。光合成のクロロフィルム色素の光電子変換機構に似ているので光合成模写型太陽電池とも呼ばれる。

製造コストは、原材料が安価であること、製造プロセスで溶融炉や真空装置を使わず、大気圧下での連続印刷が想定されることから従来型に比べて3分の1から5分の1になると予想されている。原材料である酸化チタン、色素、電解質溶液は資源的制約が少ない。

既に研究室レベルで11%の変換効率を実現しており(モジュール化後の変換効率8.4%を前提)、一般の家庭用電力料金並である25円/kWhを現状でも達成している。変換効率15%が達成されると経済産業省の最終ターゲットである7円/kWhが視野に入る。

日本では化学系企業を中心に活発な研究開発が行われていると考えられるが、30cm角以上のサブモジュール(またはモジュール)の公開実績を持つのは、アイシン精機+豊田中央研究所、シャープ、フジクラ、島根県工業技術センター。

克服すべき技術的課題は、光電極と対極を接着する封止技術。耐久性の観点からこれが確立されれば実用化に大きく近づくと予想される。

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