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アナリストコラム

「メタボ」と「ペット」 -佐藤謙三-

2008年06月27日

メタボリックシンドローム、略して「メタボ」。内臓脂肪型肥満に加えて、高血糖、高血圧、脂質異常のうちいずれか2つ以上をあわせもった状態と定義されているが、新語・造語として「肥満」と同意語、あるいは特定健康診査、特定保健指導、セルフケア等まで抱合して「メタボ」と使用されている模様である。

「ペット」とは言うまでもなく犬・猫などのペットのこと。人間の世界だけでなく、犬・猫のペットの世界でも肥満は大きな問題となっており、「ペット」の「メタボ」対策も注目されている。そして、「ペット」の「メタボ」対策を見ていると、人間の世界のセルフケア市場における「メタボ」対策と共通点があるような気がしてならない。

ペットフード工業会のアンケートによると、犬・猫の合計頭数約2,500万匹の内約3分の1が肥満気味という結果がでている。その肥満により心臓疾患や糖尿病、人間でいう、いわゆる成人病疾患が増加している。この「ペット」の「メタボ」対策に、ペットケア(ペットフードとペットトイレタリー)業界トップのユニ・チャーム ペットケア(2059)が、本年は特に注力する模様。

同社は「ペット」の四大潮流(室内飼育、高齢、肥満、小型犬対応)製品にターゲットを絞った戦略が奏功して業績が急拡大(市場も急拡大)しているが、同社でも、肥満用フードの定着には苦戦している。同社調べによると、肥満用フードを使用しない理由は「美味しそうでない」からが54%、使用を中止した理由は「食べない」からが46%。犬・猫は美味しい食べ物が出されて「僕は今ダイエット中だから半分残す」とは言わない。健康には良いかもしれないが美味しくない食べ物が出されて「私はダイエットしたいから我慢して食べる」と言うだろうか。このあたりで、自分のことのように思うあなたは立派な「メタボ」予備軍かもしれない。肥満用フード(カロリーコントロール)でありながら高い嗜好性を提供することにより、同社は潜在市場規模300億円といわれる「ペット」の「メタボ」市場に挑戦する。

人間の世界の話に戻そう。本年4月からの特定健康診査の対象者となる40歳から74歳まで約5,600万人のうち、「メタボ」該当者900万人、予備軍1,000万人、両者を合わせると1,900万人。さらに男女の内訳は、男性1,400万人、女性500万人と言われている。圧倒的に男性が多く、「メタボ」の中心は中高年の男性と言える。そして厄介なことに健康意識の低い層と言えよう。女性の場合はダイエットのために食事を制限するなど、どんな苦労も厭わないという人も多いだろうが、中高年の男性はダイエット意識が希薄。食事の味やボリュームを全く落とさないで、ダイエットが出来れば良いなという他力本願的な発想も「メタボ」該当者・予備軍の特徴。私も立派?な「メタボ」予備軍であり、「ペット」と一緒にされるのは心外ながら、ダイエットに対しての希薄さは我が家の肥満犬と大差がないかもしれな
い、とこの頃考える。

すでに食品・飲料企業は、美味しさを変えないで脂肪やカロリーを落とす商品を開発・販売して「メタボ」関連市場も徐々に拡大している。しかし、ダイエットのターゲットがこれまでのような若い女性ではなく、健康意識・ダイエット意識の希薄な中高年の男性が主要なターゲットだと言うことを強く認識すれば、さらに「メタボ」関連市場が大きく成長するかもしれない。

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