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アナリストコラム

携帯端末出荷台数の減少を見て -鈴木崇生-

2008年06月13日

携帯端末の普及はピークを迎えたようだ。JEITAが11日に公表した4月の携帯電話・PHSの出荷台数は前年同月比21.1%減という結果である。各キャリアが毎月公表する純増数から推定される解約率などを用いて逆算すると、出荷台数が大幅に減少したことは推測できていた。しかし、その幅は予想を超えた数字であった。とはいえ、もっと落ち込むと予想していた3月がほぼ横ばいで推移したことから考えると、3月に出荷台数が寄った可能性も考えられる。

現時点で5月以降も4月と同様の推移を辿ると予測するのは早計であろう。しかし、当初私が予想した以上に買い換え率は低下しているように思われる。

KDDIが一部とはいえ割賦販売を導入したことで、主要3社は全て割賦販売により携帯端末を販売することとなった。割賦販売、割引プランなどによる期間拘束を考えると、端末に関する焦点は2つに絞られてくる。1つはいかにして端末を売っていくのか、もう1つは端末の調達原価をどの様に、どこまで下げていくのか、である。当面の焦点は後者であり、不肖ながら私を含め、多くの人が着目していると思われる。しかし、長い目で見ると、前者の方が商売上重要なポイントになるのではなかろうか。

独自色のあるサービスを提供したいのに、消費者は期間拘束があるため端末を買い換えることが出来ず、サービスを受けることができない。キャリア側からすれば、独自色を浸透させ他社との差別化を図ることが出来なくなるのではないか。そのような可能性を考えている。

携帯電話の普及率はPCよりも多く、インターネットへの接続に際してはPCよりも携帯電話の方が接続数は多くなった。携帯電話はいまや生活に必要な情報端末といっても過言ではないだろう。例えば広告の世界では、携帯電話でいかに収益をあげるのかが注目点となりつつある。特に、かつては新聞、テレビ、ラジオに雑誌と競合する立場でもあった各媒体は、今では共闘する時代となっている。インターネットの普及により消費者がクロスメディア化した背景があげられる。1箇所で知った情報を消費者は他の媒体からも得ようとしているのが現状である。テレビで見た情報をインターネットで検索してみた、こんな経験がおありの方も多いだろう。そしてそのインターネットへの接続には携帯電話が用いられる時代なのだ。

広告に限らずEコマースや動画の試聴も、インターネットへ、そして携帯電話へと焦点が集まりだしている。携帯電話は商売の要となる可能性があるのだ。しかし、期間拘束の問題上、消費者が端末を買い換える期間は長期化することが想像に難くない。

「こんなことができます」、「私どもの端末であればあのサービスを受けることができます」と、新しいサービスや可能性を乗せた端末を普及させたいのに、顧客の囲い込み策があだとなって思うように運ばない。そんなジレンマを抱えながら各キャリアは新しい端末を発売し、在庫を抱えることなく売り切る戦略を展開し、他社と差別化を図らなければならない。しかし、競争上解決しなければならない課題であろう。各キャリアにとって苦しい時代が到来したといえそうだ。

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