国内金融機関の不動産融資は、当局の指導により昨春当りから選別色が強まっていたが、昨秋から金商法施行やサブプライムローン問題の深刻化などを受け一段とタイト化し、1月10日のアセット・マネジャーズ(2337)の大幅業績予想下方修正でさらに引締まり、決算を控えた3月末には極度に硬化した。巷では弱小マンションデベや私募ファンドがバタバタと潰れる’3月危機’が囁かれていた。蓋を開けると3月20日に大証ヘラクレス上場のレイコフが民事再生法適用を申請したくらいでたいした波乱はなかった。拍子抜けだった。
しかし、つぶさに見ると、エスグラント コーポレーション(8943)、総和地所(3239)は第三者割当増資により何とか切り抜けただけで実質破綻だった。未上場企業に目をやると、年度末にかけアジャックス、グレイス、東洋ホームなどの中堅中小マンションデベがバタバタ倒産していた(どれも横浜の業者なのは、なまじ都心に近いだけに地価の上昇が大きく、用地を高値で仕入れてしまったことが原因とみられる)。やはり、’3月危機’は目立たないながらも、間違いなく存在したのだ。決して1999年7の月ではなかった。
3月中旬にベアー・スターンズの救済が決まったことで潮目が変わり、世界的な信用不安は後退。不動産株の多くも一気に値を戻し、何となく危機は去ったような感がある。確かに国内金融機関の不動産融資姿勢も新年度に入って少し緩んだようで、最悪期を脱したことは間違いない。しかし、マンションデベや私募ファンドのファイナンシャル・リスクが去ったとはいえないようだ。3月に何とかリファイナンスにこぎ付けた会社も、条件付のケースが多々あるようだ。すなわち3ヶ月とか6ヶ月以内に物件を売って返済しなさいといった感じだ。マンションデべにとってはGWが勝負だった筈だが、消費者の様子見気分は強く、各社苦戦を強いられたようだ。このため巷では’6月危機’、あるいは銀行が見切りを付けて貸倒引当金を積むタイミングである’9月危機’が囁かれている。財務基盤が脆弱な上場不動産会社の破綻が相次ぐ確率は、ノストラダムスの予言が当たる確率よりも、恐らく高い。
危機が現実化し不動産株が再度クラッシュした場合は、3月中旬以降の株価急回復に乗れなかった投資家にはチャンスだろう。具体的にどの銘柄を買えばよいか? 潰れない会社がいいと思われます。