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アナリストコラム

グローバルとドメスティック -藤根靖晃-

2008年05月09日

Jパワーに対する経済産業省のTCIの株買い増し中止命令は、エネルギーの安定供給という国策と、収益機会を求めるグローバルな投資行動という相容れない論理の鬩ぎ合いの中で、日本国としてのストラクチャーの再構築を突きつけている。
本来的に議論されるべき問題は、グローバルであるべきものは何か? ドメスティックに留めるものは何か? それを外国人から見ても分かりやすい形で明示する方法は何か? ということではないだろうか。

今週(5/4-10号)の日経ヴェリタスの”異見達見”の中で、日興シティグループ証券のストラテジスト藤田勉氏が、「日本に住む日本人だからという理由で、日本株しか買わないというのも合理的ではないと言えまいか。 (中略)日本株の魅力がないといっているわけではない。グローバルな視点から魅力的な企業は数多い。要は、筆者は、外国株投資を推奨しているのではなく、グローバル投資を推奨しているのである。」と述べている。

これは至極、尤もなご意見である。しかし、反論するわけではないが、リターンを第一義に考える機関投資家はともかく(ここでは年金基金はリターンのみを追及すべきなのかという議論にはふれない)、個人投資家の全てがグローバル投資に傾注する必要はないと思う。グローバルが是で、ドメスティックが非という一元的なものであろうか? ドメスティック投資という投資概念も尊重されても良いのだろう。株主優待に対する期待や地元の雇用促進に繋がる、というような投資理由があっても良いだろうし、発行企業サイドもそうした株主を求めている場合も少なく無いだろう。

問題はグローバル企業とドメスティック企業が、同じルール(商法、SOX法など)の中で運用され、投資家から分かりやすい形で線引きがなされていないことにあるのではないだろうか。グローバル市場にある企業が、露骨な買収防衛策を導入することには問題があるだろう。しかし、ドメスティック企業に全く同じ規制の枠をはめることが適切であろうか。本来はドメスティックとして扱われるべき企業に外国人投資家が投資を行ったために軋轢が生じ、結果として市場(あるいは国家)全体の信頼が失われるという事態は避けねばならない。SOX法にしても弾力的運用が求められるのではないだろうか。大企業と同じ、内部管理体制並びに開示ルールを設けた結果、IPO企業数は激減してしまった。

原則となるべき、大枠の法規制は必要であるが、対象とする企業、投資家にあわせて取引所の上場ルールの上で運用されるべきではないだろうか。また、市場そのものも公開基準や審査厳格性のみで分けられるのではなく、グローバル投資家を対象とした市場、ドメスティック投資家を対象とした市場、ベンチャー市場といった形で市場そのものの性格を明確に打ち出すことが求められているのではないだろうか。上場する市場により求められるガバナンスの形式、内部管理体制、開示ルールなどが決定されるべきではないだろうか。

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