帝国データバンクが8日に発表した2007年度の企業倒産件数は前年度比18.4%増の1万1,333件。比較可能な2001年度以降で最多となった。とりわけ、法人格を持たない個人経営の倒産は36%増の1,819件と増加が著しい。9日の日経新聞の解説では、消費者金融からの融資で運転資金をまかなっていた個人事業主が倒産するケースが増えているとしている。
改正貸金業法施行を受けた業者の与信強化により融資を受けにくくなっているためだ。業種別に倒産件数が最も多かったのは建設業で3,043件。公共工事削減、資材高に加え、改正建築基準法施行による着工遅れが響いた。消費者保護の名のもとの法改正による規制強化が不況に追い打ちをかけている格好だ。官製不況と呼ばれる所以である。
事業者ローン会社も個人事業主への融資には厳しい姿勢で臨んでいる。SFCG(旧商工ファンド)の社長は中間決算説明会の席上で、田舎の美容院とか喫茶店に100万円を15%の金利で融資しても採算は全く合わないと語った(貸付金額が100万円以上になると上限金利は15%)。個人事業主への新規融資は原則行わず、既存債権についても少しでも延滞すれば、利息返還請求リスクを覚悟してでも期限の利益の喪失条項を適用するという。いわゆる貸し剥がしだ。新銀行東京をみても無担保無保証の融資が難しいことは明白であり、すでに無担保無保証融資からは完全撤退している。個人事業主の資金繰りは益々もって厳しい。筆者は売れないミュージシャンに泣きつかれ、断り切れずに金を貸している。多分、返ってくることはないだろう。貸金業法改正の影響はこんなところにも及んでいるのだ。
消費者金融、事業者ローン自体の倒産や廃業も深刻だ。昨年9月には東証1部上場だったクレディアが資金繰りに行き詰まり破綻した。2010年6月までに完全施行される改正貸金業法による上限金利引下げ、総量規制による直接の収益減よりも以前の問題として、利息返還金の急増、事業環境の急激な悪化に恐れをなした金融機関の融資姿勢の硬化が経営を脅かしている。
今週、2月決算の流通系カード会社の決算発表が出揃い、利息返還金の先行指標となる弁護士等の介入件数が各社概ね昨年4月頃をピークにやや減少し、その後、高止まり状態ながら足元はやや沈静化していることが明らかにされている。昨年12月の改正貸金業法の2号施行による総量規制の一部前倒し導入の影響が懸念されたが、特に影響は表れていない。少しは明るい兆しが表れており、今年前半は高原状態が続くが、後半から徐々に減少していくとの見方を示している会社が多い。しかし、消費者金融の場合は、完済までの平均期間がカード会社よりも長いことや、総じて歴史が古いこと、顧客層がカード会社よりも悪いことからまだまだ予断を許さない。独立系では楽観的な見通しを示すところもあるが、悲観的だと資金調達に響くためとみられ、割引いて聞く必要がある。改正貸金業法が完全施行され総量規制が導入されると、資金繰りに詰まった借り手からの利息返還請求が再度増える恐れも残っている。独立系ノンバンクの綱渡りは続く。