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アナリストコラム

近年のカメラ需要

2008年03月28日

カメラ映像機器工業会(CIPA)発表の08年1月のデジタルスチルカメラの総出荷台数は587万台。1月は08年から統計参加企業が増えたことにより単純な前年同月比較はできないが、07年のデジタルスチルカメラ総出荷台数は初めて1億台を突破した。業界関係者の話によると、そこまでの台数成長は期待していなかった様だが、コンパクトデジタルカメラも好調だったことにくわえ、レンズ交換式一眼レフタイプのデジカメも756万台(前年比42%増)と急成長。カメラメーカーの入門機投入により、今までメインユーザーとされてきた男性客に加え、女性客まで需要が拡大していると推測される。

米国経済の悪化、足元の円高基調を受けながらも、現在カメラ各社は春商戦に向け、次々と新製品を発表している。

デジタル一眼レフではシェアトップのキヤノン(7751)は3月に「イオスキッスX2」を発表。量販店の反応も好調の模様だ。それに対抗するはシェア僅差のニコン(7731)の「D60」。両製品ともエントリーモデルながら十分な機能を果たしており、熾烈なトップ争いはまだまだ続く。ここで忘れてはいけないのが、「交換レンズ」の販売動向。07年総出荷台数は前年比47%増と好調だった。一眼レフ中上級者になると、撮影場面に応じてカメラレンズを替える。また、標準レンズでも最低レベル2万円台、本格的な望遠/専門レンズになると10万円、50万円を優に超える。また、その平均利益率は20%前後と企業への利益貢献は大きい。そこを狙ってか否か、ソニー(6758)はコニカミノルタホールディングス(4902)の「αブランド」事業を買収。六本木ヒルズで大規模な写真展示を実施し認知度向上を図った。ブランド力を強化し、デジタル一眼レフ市場でシェア10%獲得を目指す考えだ。

一方、手頃な価格で広くユーザーに親しまれているコンパクトデジタルカメラ。07年総出荷台数は9,289万台と前年比では26%増と伸長したものの、価格競争は激しく金額ベースでは13%増。シェアトップは上述のキヤノンだが、一眼レフ市場での2強の様相は無く、ソニー、イーストマンコダック、オリンパス(7733)などが後に続き混戦状態。競合企業の多数存在するコンパクトデジカメ市場は、価格競争が激化している。また「代替品との競争」で言えば、携帯電話メーカーとも戦っていかなければならない。10年ほど前には思いもよらなかった携帯電話へのカメラ搭載。画素数は年々増加し500万画素前後と、コンパクトデジカメの700?800画素に比べればスペックは低いものの、近年その性能を改善しており、長期的にはカメラメーカーの脅威となりうる存在だ。

今年は8月に北京オリンピックが開催される。
オリンピック等で旅行需要が喚起されれば、カメラ需要の拡大が想定される。ただし、今年の北京オリンピックは不透明感が強い。米国の金融危機を発端とした世界経済の悪化懸念、原材料価格の高騰、中国のインフレなどに加え、チベット騒動を背景にした諸国のオリンピック開催批判も後を絶たない。

その環境下、持ち前のブランド力を活かしたマーケティングを行い販売台数の大幅増加を達成するか、それとも米国経済環境の悪化の渦に飲まれ販売台数を落とすのか。08年は実力を問われる年になりそうだ。

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