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アナリストコラム

資金循環統計から見る家計の株式投資 -鈴木崇生-

2008年03月21日

アノマリーを御存知だろうか。理論では説明できないものの、よく当たるとされる経験則である。
このアノマリー、色々とあるが、その中に「節分天井、彼岸底」と呼ばれるものがある。

3月が底となるのは、決算前の利益確定やポジション整理が要因と推測されている。ところがこのアノマリー、今年は通用するのか懐疑的。3月の日経平均は確かに2月より低いが天井を探せば去年の8月で、市場はまだ底値を探る展開だ。

本日発表された資金循環統計(日銀。2007年12月末時点の速報)によると、家計の資産は1,544兆円。9月末時点に比べて約0.6%増加している。しかし、株安の影響により株式の残高は9月末時点より8.4%も減少してしまった。株安の影響も投資マインドの冷え込みに寄与したと考えられるだろうが、7-9月は1,687億円の買い越しだった投資意欲も10-12月には9,251億円の売り越しに転じている。

金融資産のうち現金・預金が占める構成比は50.8%。2007年12月末50.0%、9月末50.2%と比べ上昇。9月末の現金・預金はアウトフロー。対して12月末ではインフローしていることから、家計はリスクに対して敏感になっている様を感じ取れる。貯蓄のない世帯が20%を越える中で家計の投資は進み、投資できる人は投資へ目をむけ実行していると推察できたのが2003年。これまでは株価上昇も手伝って一本調子ではあったが、今、家計は株式の内包するリスクへ目を向け始めたと考えている。

株価は下落基調であるものの、東証による投資部門別売買状況からは足元の株価を支えているのは個人であるとわかる。同資料による年明けから3月の第1週までの手元集計では買い越し超過だ。投資マインドは売り一辺倒ではない。一方で市場に視線を転じると、19日の引け値時点でPBR1.0倍以下、配当利回り3.0%以上の双方に該当する上場銘柄数は900近くにのぼる。株価指標面からすれば割安と考えられるにも関わらず買いが入らないことは、家計が投資対象の選別を進めているためだろう。

明確な成長路線と投資リスクが明示されない限り、家計に投資してもらうのは難しい企業が現れだしたと受け取れる。
企業にすれば上場している意味を問われる結果であり、我々アナリストにすれば如何に本当に割安で放置されている株式の投資魅力を伝えるか問われていると感じさせられた。

※資金循環統計における家計と東証の投資部門別売買状況における個人は同義ではない。

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