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アナリストコラム

国内電機業界の最近の事業見直し・再編の動きについて -服部隆生-

2008年03月14日

国内電機メーカーの間で事業再構築の動きが加速している。一昔前のIT不況期には半導体業界の再編が進んだことが記憶に新しいが、今回は液晶パネルやPDP(プラズマディスプレイ)など薄型テレビ向けパネル業界が再編・提携の中心となっている。3月7日にはパイオニアがPDPの自社生産から撤退を正式に発表。同社はPDPテレビの市場を本格開拓した文字通りパイオニアで、独自のパネル製造技術を武器に黒の再現力を高めた質の高い製品を提供していたが、PDP事業の赤字が続いており、収益改善のシナリオが見えなくなっていた。

固定費負担の大きいPDPビジネスではやはりある程度のボリュームを確保する必要があり、ハイエンド商品をプレミアム価格で販売するモデルが成立しにくいことはある程度予見できたと考えられる。PDPテレビの技術開発でリードしているとの過信があったのかもしれない。確かに、素晴らしい画像を見てこれが売れないはずがないと思う気持ちはわからないでもない。しかし、変化の速く、かつ激しいデジタル時代では少しの決断の遅れも命取りになりかねず、走りながら先を考える必要がある。自社の技術力・商品力・資金力・販売力などを総合的に冷徹な目で見て、中長期的な視座のもとに迅速な経営判断が求められる時代といえるだろう。更に言えば、競合他社の将来の出方を予測し中長期的に自社のポジションをどう市場の中で位置付けていくか、先行きを読みながら決断する能力も重要となってくる。

薄型テレビは市場自体は成長しているものの最終製品の価格下落圧力の厳しさから大手メーカーでも苦戦している状況で、特に中堅メーカーは殆どが赤字という惨状だ。垂直統合型か水平分業型かというビジネスモデル以前の問題として、そもそも自社が薄型テレビを手掛ける必要があるのか、という原点からの議論に加えて、今一度自社の競争力と今後戦って行く領域を見つめ直す必要がありそうだ。

また、液晶パネルでは、松下電器産業が日立製作所の液晶パネル子会社を傘下におさめ、液晶、PDPの二つの薄型テレビで垂直統合モデルを目指す一方、日立製作所や東芝は液晶パネルを外部調達する水平分業モデルへ軸足を移す。一方、ソニーはこれまでのサムスン電子に加えて、シャープとも液晶パネルを共同生産することで合意した他、シャープは東芝やソニーなどへのパネル外販を拡大し液晶パネルで稼ぐ構図を模索するなど、電機大手各社の戦略の違いも明らかになりつつある。当然会社によってブランド力、強み、競争力の源泉に違いがあり、どれがベストという選択肢は存在しない。自社の選んだ戦略を遂行する為のタイムリーかつ正確な経営判断が必要となってくる。日本の電機大手は薄型テレビ以外にも数多くの製品群を抱えており、今後はそれ以外の分野でも事業見直し・再編の動きが加速するだろう。

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