9日にロシアの「ドイツ戦勝記念日」においてプーチン大統領は従前通り正当性を主張する講演を行いましたが、一部の観測に出ていた「戦争状態の宣言」は行いませんでした。懸念された戦線拡大には至らなかったものの、今後のロシアの軍事作戦についての不透明感は増したようにも思われます。
ロシアに対する経済制裁の強化やウクライナへの武器供与拡大から、ロシアを追い込むことは、他方でロシアの戦闘方法を先端化させる可能性も考えられます。市場の不安心理の底流には、インフレや米国の利上げ・量的引き締めの強化による不況リスクに加えて、世界で最も核を保有するロシアの動静への不安も根強いと考えられます。そのため、戦闘終結への方向性が見えてくるまでは、リスクプレミアムの高止まりが予想され、株価は乱高下しやすい下地にあると考えます。
3-4日の米FOMCにおいて、0.5%の利上げと6月からのQT(量的引き締め)の開始が決定されました。0.75%の利上げが従前予想にはありましたが、パウエル議長は「次の2会合において0.5%の利上げを議論すべきだとの認識が広くみられる」と述べ一旦は市場を安堵させ、4日の米国株の大幅高に繋がりました。しかしながら、6日発表予定の雇用統計に対する雇用鈍化と賃金上昇への懸念から5日の米国株は一転大幅安となりました。今週も4月の米消費者物価(11日)、米生産者物価(12日)の発表前後に株式市場は上下に揺れる可能性も考えられます。
6日の米雇用統計(4月)において非農業部門雇用者数は42.8万人増でした(3月改定値も同じ)。失業率も3.6%と前月比横ばいではありましたが、労働参加率が低下したことが影響しており、労働需要がタイトな状況が続いています。平均時給は前年比+5.5%と3月(+5.6%)からやや鈍化しましたが高水準が続いています。
9日発表の4月の中国貿易統計(ドル建)において、輸出は+3.9%に留まりました。上海市のロックダウンに伴うサプライチェーンの混乱が影響しています。上海日本商工クラブは5日、上海市に工場を擁する日系企業の内63%が操業停止、28%が「稼働率3割以下」であると発表しました。中国のゼロコロナ政策継続の影響は今後拡大することも考えられます。
国内企業の業績見通し(ガイダンス)は6日時点の発表までは予想したほどは悪くないとの見方も多いようです。22年度は全体的に増益見通しが維持されそうですが、それでも3月末時点のコンセンサスには届かない可能性が強いと考えます。
前回(ゴールデンウィーク前)の当コラムにおいて、慎重な企業ガイダンスが織り込まれる5月中旬頃には悪材料の消化から反転上昇が期待できると述べましたが、(もちろん、一時的に反騰する可能性は十分にありますが)もう少し、慎重さを保持しておいた方が良いかもしれません。