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アナリストコラム

米国株式市場の急反発もまだ混沌のボックス圏 -藤根靖昊-

2022年05月31日

前々週(5月16-20日週)まで8週連続の下落となったNYダウは20日から27日まで6日連続上昇しました。この間の上げ幅は1,959ドルにも達しました。この背景にはFRBの「タカ派」姿勢が後退したと市場が捉えたことが要因のようです。
20日にセントルイス連銀のブラード総裁が「インフレ期待が制御できれば23-24年に利下げできると」と発言。23日にはアトランティック連銀のボスティック総裁が「9月に利上げを一時停止するのが理に適う」と言及しました。25日に公表された5月のFOMC(3-4日)議事録要旨において、大半の参加者が「今後2回の会合でも0.5%の利上げが適切になるだろう」と指摘しましたが、0.75%の利上げへの言及が皆無であったことからFRBの「タカ派」姿勢がさらに強まるとの懸念は大きく後退しました。

FRBの「タカ派」が後退したのは住宅販売など経済指標が景気後退を示唆する内容が多いことによります。市場の懸念はインフレから利上げ・引き締めによる“オーバーキル”に移行していたことが背景と言えるでしょう。
今週は、31日:コンファレンスボード消費者信頼感指数、6月1日:ISM製造業指数、3日: ISM非製造業指数、米雇用統計と発表が続きますが、仮に市場予測よりも弱い数字(=経済悪化)であったとしても、(一時的に株価が下落することがあっても)景気後退に対してFRBが「ハト派」姿勢を強めるとの解釈から大崩れする可能性は少ないと考えます。しかしながら、インフレの鎮静化が見えてこない限り、本格的に株価が上昇トレンドに入る可能性も低いと思われます。インフレ懸念とリセッション懸念の狭間でFRBも「タカ派」と「ハト派」のトーンを変化させることが考えられ、それにつれて市場の揺らぎは続くと考えます。

31日発表の中国製造業PMI(国家統計局)は49.6と前月から2.2pt上昇したものの3カ月連続で50を下回りました。ゼロコロナ政策の継続によるサプライチェーンへの影響が残ることに加えて、住宅販売の不振が顕著になっています。4月の中国の住宅販売額は前年同月比▲47%と半減しており、不動産企業への信用不安に加えて地方財政への影響が懸念されます。

30日に欧州連合(EU)は、ロシア産石油の輸入を禁止することに合意しました。直ちに3分の2の輸入が止まり、年内に90%が輸入禁止になる模様です。原油市場の高止まりが見込まれ、日本もマイナス影響が継続することが懸念されます。

27日時点の日経平均株価のコンセンサスEPS(IFIS/TIW作成)は全期間で前週比マイナスとなりました。ただし、コンセンサスDI(前週比プラス企業とマイナス企業の割合)は全期間で50上回りました(=前週比プラスとなった企業数の方が多い)。まだ全体としての方向感が見えない状況が続きそうです。少なくとも1Q決算頃まではボックス圏(26,000~28,000円)の動きを想定します。

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