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アナリストコラム

ロシア・ウクライナ戦争の現在位置の認識について -藤根靖昊-

2022年06月07日

ロシア・ウクライナの戦闘に関しては、5月以降はロシアの劣勢を伝える報道が減少し、むしろロシア優位に大きく傾いているように見受けられます。株式市場に回復傾向が表れつつあるのは、米国利上げがひとまず織り込まれたことが主因であるものの、底流に戦争終結の兆しを市場が感じ取っているのではないかと推察されます。

5月31日の日経朝刊「The Economist“ロシアの侵攻、終結のシナリオ” 」に興味深い指摘がいくつもありました。西側諸国は「和平追求派」と「対ロシア強硬派」に分かれており、前者はドイツ、イタリア、フランスなどであり、フランスはロシアに屈辱を与えない和平協定が必要だとしています(ちなみに後者は旧ソ連による抑制を受けたポーランドやバルト諸国)。
5月24日のダボス会議のキッシンジャー元米国務長官は講演において「(2月24日時点)それ以上の領土奪還はロシアに新たな戦争を仕掛けることになる」と語り、2カ月以内に交渉に入るべきと述べました。NYタイムズもロシアを敗北に追い込むのは非現実的で危険だと論じています。ウクライナが戦闘を継続できるのは西側の支援次第であり、欧州の一部の国では支援疲れが生じているとの指摘もあります。

ロシアの原油販売先は、欧州から中国やインドなどアジアに販売先がシフトし、価格高騰のメリットを享受しています。ブルムバーグ(5/31)は、ウクライナでの戦闘開始以来、「ルーブル・人民元」の月間取引高は1067%増加し約40億ドルに達していると報じました。ロシア経済の破綻から戦闘継続が困難になるとの見通しにも狂いが生じているようです。主要銀行で形成されるクレジットデリバティブ決定委員会は1日、ロシア国債が「支払い不履行」になったとの判断を示しましたが、これは債権者の損失を確定させるものでしかないように見受けられます。

市場ではFRBの9月以降の利上げスタンスを視野に、米国経済に対して「悪いニュース」が買い、「良いニュース」が売りという反応を繰り返していますが、戦闘終結が視野に入るようであればリスクプレミアムの低下から株価水準の上方シフトも考えられます。これまで、筆者は日経平均株価は28000円程度を上限としていましたが、その場合は大幅な修正が必要になると考えております。
その際には、FRBはインフレ対策を強める株高による資産効果を抑制する動きから「FRBコール」と呼ばれる高官発言などの警戒アクションを強める可能性も考えられます。その結果、米長期金利が上昇し、為替のドル高・円安がさらに進む可能性が高まると思われます。
自動車関連など半導体不足による部品供給問題が依然として続いていますが、輸出関連のウエイトを高めておく必要がありそうです。

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