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アナリストコラム

日経平均株価は米国金利上昇を加味すれば既にコロナ前の水準 -藤根靖昊-

2022年06月21日

先週は経済指標発表をはじめとして冴えないニュースが続きました。NYダウは週間で1,504ドル下落し3万ドルを割り込み、日経平均株価は1,861円安となり26,000円割れとなりました。発表等を時系列で紹介すると次の通りです。
14日:米生産者物価指数(5月)前年同月比▲10.8%。ロシア国営ガスプロムが「ノルドストリーム」向け供給の40%減を発表。
15日:中国小売売上高(5月・前年同月比)▲6.7%、不動産開発投資(1-5月・前年同期比)▲4.0%。米小売売上高(5月)前月から0.5%減少。FOMCにおいて0.75%の政策金利引き上げ決定。
16日:スイス国立銀行が政策金利を▲0.75%から▲0.25%に引き上げるサプライズ。英イングランド銀行が政策金利を0.25%引き上げ。米住宅着工件数(5月)が前月の改定値から▲14.4%の減少。

FOMC(14-15日)での0.75%の利上げは直前の市場予測に織り込まれていたことからサプライズではありませんでしたが、参加者による22年末時点の政策金利予想は前回(3月時点)の1.9%から3.4%へと大きく引き上げられました。残り4回の会合でさらに1.75%の引き上げが必要になります。その結果、景気減速(リセッション)懸念が強まっております。今後は景気指標としてインフレ指標だけでなく、雇用関連指標(週間の失業保険受給申請数など)が重視されるものと考えます。
日銀は政策決定会合(16-17日)においては現状維持が決定されました。国内においては消費者物価指数がより注目を集めるものと考えます(5月の消費者物価指数は24日発表)。

コロナ禍における超金融緩和によって上昇した株価はコロナ前の水準まで戻るとの見方も一部にはあるようです。2019年末の日経平均株価は23,816円です。ただし、この時点の予想EPSは今期ベース1,263円(⇒PER18.8倍)、来期ベース1,388円(⇒PER17.1倍)。先週末時点の予想EPSは今期1,755円、来期1,877円と19年末を大きく上回っています。これに単純に19年末のPERを適用すれば日経平均株価は32,000~33,000円と算出されます。
しかし、19年末とは市場金利が異なっております。長期金利は、日本は日銀がイールドカーブコントロールを維持していることから19年末当時から0.25%程度の上昇にとどまっておりますが、米国は1.4%程度上昇しています(1.89%→3.23%)。仮に米国金利上昇分(1.4%)をPERに織り込むならば(PERを株式益回りにして金利上昇分を加算)、日経平均株価はおおよそ25,900~26,100円と算出されます。つまり、現水準は(今後のさらなる米長期金利上昇の可能性や企業業績の下押し懸念を除外すれば)既にコロナ前に戻っていると言えそうです。前回も申し上げましたが、日経平均26,000円近辺の水準は拾い場と考えます。

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