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アナリストコラム

インフレと景気減速の狭間で株価は揺れる -藤根靖昊-

2022年06月28日

27日に主要7カ国首脳会議(G7サミット)において、ロシア産石油の価格に上限を設ける制裁の導入で合意しました。欧米が行ったロシア産石油の輸入停止処置は、原油高を引き起こし、中国・インドや新興国が購入を止めなかったことからロシアへの制裁効果は限定的なものに留まりました。中国の5月の原油輸入量はロシア産が最大となっています。
今回の制裁はロシアの戦費調達を遮断することを目的としたものですが、結果的にロシア産調達にお墨付きを与える結果を齎すように感じられます。ただし、原油価格全体の引き下げに繋がるのであればインフレ抑制にはなるかもしれません。

世界的な金融引き締め強化の中で、経済減速への懸念が高まり、国際商品市況が軟化しています。その結果、インフレ懸念が後退し、長期国債利回りが一時的に低下しました。22日の米上院委員会の証言においてパウエルFRB議長は、引き締めが景気後退を呼び込む可能性について認める発言を行いました。23日にS&Pグローバルが発表した6月の購買担当者景気指数はユーロ圏が21年2月以来、米国が22年1月以来の低水準であり、さらなる低下も予測されています。景気指数の悪化が金利低下を促し、ハイテク株などの買戻しに繋がりました。しかし、景気後退は企業業績の悪化につながると考えられるだけに、自律反発の域を超えることはなさそうです。株価はインフレと景気後退懸念の狭間で揺れ動く展開が今後も続きそうです。
今週は、28日:米コンファレンスボード消費者信頼感指数(6月)、30日:米PCEデフレーター(5月)、1日:ISM製造業PMI(6月)が注目されます。

27日に気象庁は関東甲信、東海、南九州の梅雨明け宣言を平年よりも約3週間早く行いました。27日にはまた経済産業省が東電管内に対して需給逼迫注意報を出しました。猛暑によって夏場の電力不足が懸念され、国内経済回復の足枷になる可能性が生じています。また、7月から渡航者の受け入れが始まりますが、新型コロナの感染者数増加にも注意が必要と思われます。世界全体では6月の感染者数(月間)は5月を上回っています。

日本株は戻り歩調にあるものの、日経平均株価は当面は28,000円が壁と考えています。全体相場が停滞する中でも、景気減速で金利上昇圧力が低下すれば成長株に物色対象が戻ってくると考えます。

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