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アナリストコラム

米金利低下による買戻しは一時的とみる -藤根靖昊-

2022年07月05日

先週発表された米国経済指標はいずれも景気減速を示す内容であったことから、株価下落が進みましたが、週末にかけて米長期金利が大幅に低下したことから株の買戻しが生じています。

先週の主な発表は次の通りです。
6月28日発表のコンファレンスボード消費者信頼感指数(6月)は98.7と前月比▲4.5ポイント低下、6カ月先を見通す「期待指数」は▲7.3ポイント減の66.4と2013年3月以来の低水準となりました。
29日にパウエルFRB議長はECB主催のシンポジウムにおいて、「(より大きなリスクは)物価安定の回復に失敗することだ」、「労働市場は金融引き締めに耐えることができる状態にある」と述べたことから、大幅利上げへの警戒感が強まりました。
30日発表の米個人消費支出(PCE・5月)は消費の伸びが前月比0.2%(予想は0.4%)と鈍化する一方で物価指数は6.3%と高水準横ばいでした。
7月1日発表のISM製造業景況感指数(6月)は53.0と前月から▲3.1ポイント低下しました。これを受けて、米アトランタ連銀が米実質GDPを予想する「GDPナウ」は4-6月期GDPを前期比年率▲2.1%と算出。2四半期連続でGDPがマイナスとなることでリセッション入りがほぼ確実になりました。こうした一連の経済指標悪化を受けて、米10年国債利回りは週半ばの3.2%台から一時2.8%を割り込む水準まで低下しました。長期金利低下を受けて1日の米国市場は反発し、週明けの東京市場はその流れを受けて買戻しが生じています。

国内では、30日発表の鉱工業生産(5月)が前月比▲7.2%と2カ月連続でマイナスとなり、基調判断が「弱含み」に引き下げられました。1日発表の日銀短観(6月)の業況判断DIにおいて大企業製造業は3月時点より▲5ポイント低下しました。1日発表の有効求人倍率(5月)は前月比0.01ポイント上昇しましたが、失業率(5月)は0.1ポイント悪化しています。国内も経済指標は芳しくはありません。その経済指標よりもインパクトがあったのが、30日にロシアが「サハリン2」の運営の無償譲渡を命じる大統領令を発したことです。「サハリン2」は国内のガス需要の約10%を占めています。供給が閉ざされればエネルギー需要を賄う代替先を確保することが求められ、一段とエネルギー価格の上昇が懸念されます。

リセッション懸念が強まることで金利低下から株式の買戻しが生じておりますが、短期的な動きと考えます。むしろ、今後の業績見通しの悪化には警戒が必要です。アナリスト・コンセンサス予想にもまだ僅かではありますが業績悪化の兆しが見え始めています。当面の日経平均株価のレンジをこれまでは26,000円~28,000円と見ておりましたが、25,600~27,600円とやや引き下げます。
ただ、金利低下は成長株への投資機会を促すものと考えています。景気やグローバル・サプライチェーンの影響を受けない銘柄を物色したいと考えます。

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