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アナリストコラム

美しい国・日本の終わり -藤根靖昊-

2022年07月12日

経済指標の悪化を受けて米長期金利(10年国債利回り)は6日に2.74%まで低下しました。6日に公表されたFOMC議事要旨において利上げに強い姿勢を滲ませる内容でしたが、景気後退よりもインフレの悪影響をFRBが優先することで金利上昇に歯止めがかかったと市場では捉えられたようです。先週の米国株式市場においては金利に対して敏感なハイテク株の上昇が目立ち、ナスダック総合指数が5日連続で上昇しました。

しかし、8日発表の6月の米雇用統計において非農業部門雇用者数が前月比37.2万人増と市場予想(約26万人)を大きく上回り、平均時給も前年比+5.1%(5月は+5.3%)と高止まりしたことを受けて再び米長期金利は上昇し、インフレ抑制のために金融引き締めが進むとの見方が広がっています。

安倍元首相が銃撃によって亡くなられるという極めてショッキングなニュースがありました。その弔いもあり、参議院選挙(8日投開票)で自民党が圧勝したことで週明けの日本株は大きく上昇しました。米金利上昇を受けて、ドル円は137円台と円安が進んだことも11日の時点では輸出企業のメリットとして前向きに捉えられましたが、同日の海外株式市場の下落を受けて懸念材料に変わっています。

インフレによる金融引き締めや経済減速も市場は織り込んだように先週は見えましたが、終息が見えないロシア・ウクライナ戦争、中国での新型コロナ感染の広がりによる行動制限の拡大、景気後退の可能性の高まりを受けて、株式市場は上値の重さを再び強く意識する展開が続くと思われます。

今週は、13日:米消費者物価(6月)、14日:米生産者物価(6月)、15日:米小売売上高(6月)と金利への影響の強い指標の発表が相次ぎます。インフレの鈍化が見えないならば株式市場は強く下押しすることも懸念されます。15日には中国経済指標(4-6月実質GDP、6月の工業生産・小売売上・固定資産投資・新築住宅価格)の発表も集中します。9日発表の中国消費者物価指数は前年同月比+2.5%と5月(+2.1%)から上昇しています。中国経済の鈍化も株式市場には影響を与えそうです。

末筆になりますが、安倍元首相がお亡くなりになったことに強く哀悼の意を表したいと思います。政権の要であったと同時に、外交における最重要人物を失ったことは国益としても重大な損失であることは申し上げるまでもありません。あの時が落日の始まりであったと後世において語られないことを祈るばかりです。

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