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アナリストコラム

ペロシ訪台から市場緊迫、中国不動産問題も深刻化 -藤根靖昊-

2022年08月02日

7月26-27日の米連邦公開市場委員会(FOMC)において、事前の市場予想通り0.75%の利上げが行われました。パウエル議長が「金融政策のスタンスがさらに引き締まるにつれて、引き上げペースを緩めることが適切になる可能性が高い」と述べたことから、市場では引き上げペースが緩やかになるとの見通しが強まり、27~29日の3日間合計でダウ平均は1,083ドルの大幅上昇となりました。

週明け月曜日(1日)の東京市場はこの流れを受け継いで日経平均株価は28,000円を覗う展開でした。1日発表の米ISM製造業景気指数(7月)は52.8と前月(53.0)から低下したものの、市場予想(52.0)は上回りました。しかし、1日の米国株式市場は小幅下落でしたが、台湾を巡る警戒感の台頭から、米国債利回りは大きく低下し(10年債は2.5%台)、ドル円は132円台まで円高が進みました(2日の東京市場では130円台/ドルまで下落)。

急激に警戒感が高まったのは、アジア訪問中のペロシ下院議長が2日(日本時間11時20分)に台湾を訪問することを明らかにしたことによります。これに対して中国は、中国人民解放軍は積極的な対応を取ると示唆しており、軍事衝突には至らなかったとしても、今後の米中の対立が深まることが予想されます。

中国では住宅ローンの不払い運動が生じているなど不動産セクターの流動性危機が深刻化しつつあります。中国地方政府の土地収入は1-6月で前年同期比▲31%の減収(6月単月は▲39.7%)となり、地方財政にも大きく影響が出ています。また、厳格なゼロコロナ政策の推進による消費停滞やサプライチェーンの混乱も景気減速に追い打ちをかけています。こうした内政面の危機が高まることは、台湾問題への先端化に繋がる危険も考えられます。

7月中の国内企業の決算発表を見る限りでは、ソニーグループ(6758)など一部企業の業績下方修正もあったが、企業業績全般は事前に想像していたほどは悪くはないようです(概ね堅調)。小幅ながら上方修正企業数が下方修正企業数を上回って推移しており、アナリストコンセンスも若干ながら上向き傾向にあります。
ただし、欧州経済の停滞、米国のインフレ鎮静化がまだ手探りであることなどに加えて、中国経済の減速と金融不安の強まり、台湾問題の緊迫化などからリスクプレミアムは上昇していると考えられ、上値を追う展開は期待しづらいと考えます。目先のリスク回避的下落が一巡した後も主力銘柄ではなく、ニッチトップ企業や小型成長株など個別物色の展開が続くと考えます。

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