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アナリストコラム

株式市場は経済減速よりも金利低下をポジティブと見るのか? -藤根靖昊-

2022年08月16日

10日発表の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比+8.5%と6月(+9.1%)から低下するとともに市場予想(+8.7%)も下回りました。11日発表の米卸売物価指数(PPI)もまた季節調整済み前月比で▲0.5%となりプラスを見込んでいた市場予想(+0.2%)を大きく下回りました。また、全米自動車協会が発表した11日時点のガソリン価格(全米平均)は3.99ドル/ガロンと5カ月ぶりに4ドルを割り込み、ガソリン価格の下落が物価上昇を和らげています。その結果、インフレ懸念が大きく後退し、(5日発表の米雇用統計が好調だったことについて)米国経済は底堅いと市場が見て取ったことから先週のダウ工業株30種平均は957ドルの大幅上昇となりました。

週明け15日に発表された中国の7月の各種経済統計(工業生産・社会消費品小売総額・固定資産投資)はいずれも前月を下回る内容でした。加えて、同日に発表されたNY連銀製造業景気指数(8月)が-31.3(予想:5.0、7月:11.1)と著しく悪化したことを受けて、債券市場は経済減速を織り込むように上昇(利回り低下)しました。しかし、株式市場は金利低下をポジティブに受け止めたのでしょうか、15日の米国株式市場は続伸しています。

日本株は米国のインフレ懸念後退と米国株高を受けて、祝日(11日)明けの12日及び15日の2日間において、日経平均株価は1,051円と大幅に上昇し、2万9,000円に迫っています。米国株に対する見方が大きく分かれていることもあり、米国市場を覗う展開が予想されます。米国市場では今後発表される経済指標によって市場センチメントが上下に振れるように思われます。今週は、17日:FOMC議事録要旨(7/26-27分)、18日:フィラデルフィア連銀製造業景況指数・中古住宅販売件数(7月)が注目されます。また、来週の23日:マークイット購買担当者景況指数、26日:個人消費支出(PCE)物価指数、などがポイントになりそうです。

TIWで算出している日経平均株価の妥当レンジは、コンセンサス予想EPSが(特に今期ベースで)プラスとなったことを受けてやや上方にシフトしました。それでも地政学リスクを加味すれば29,000円前後が目先の上限と思われます。
コンセンサスDI(日経平均の予想EPSが前週比プラスになった企業数の比率)は、今期ベースが60%近くになった一方で、来期ベースは2週続けて50%割れとなりました。目先の業績堅調を織り込みつつもグローバルの経済減速を織り込みつつあるように見えます。
単純思考では、景気悪化から企業業績への懸念が強まり株価が低迷すると考えられますが、金利低下によって不況下の株高が再び訪れる可能性も残ります。それだけにFRBの姿勢に市場は過度に敏感になっているのかもしれません。

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