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アナリストコラム

9月FOMCで0.75%利上げを織り込む展開も、利上げにより転換点を迎える -藤根靖昊-

2022年08月23日

先週も米経済の減速を裏付ける経済指標の発表が多かったようです。7月の米住宅着工件数(16日)は前月の改定値から▲9.6%減となり1年5カ月ぶりの低水準を記録しました。7月の米小売売上高(17日)は市場予想(+0.1%)を下回り前月比横ばいにとどまりました。週次の住宅ローン申請件数(17日:12日までの1週間・総合指数)は2000年以来の低水準を記録したようです。

注目されたFOMC議事録要旨(17日:7/26-27分)において、「さらなる金利引き締めが求められている」とする一方で「必要以上に引き締めてしまう」ことを危惧する内容でした。また、利上げを減速する可能性を指摘しつつも時期を示さないことから、“フォワードガイダンスの停止”と市場では受け止められています。

FRBのフォワードガイダンスが不在となる中で、市場では“タカ派”と“ハト派”のそれぞれの解釈が併存しており、FRB高官の発言や有力ストラテジストの主張によって株式・債券ともに振れやすい方向感の見えない展開に陥っています。
しかしながら、ハト派と目されているセントルイス連銀のプラード総裁の「(9月のFOMCについて)私は現時点では0.75%に傾いている」という発言が出た頃から市場では利上げ減速観測が急速に後退しています。19日にロシアのガスプロムがノルドストリームの供給を一時停止(8/31~9/2)すると通告したことも市場の不安心理を強めました。
22日の米国市場では10年国債利回りは3%台に上昇し、ダウ工業株30種平均は643ドルの下落となりました。ジャクソンホール会議(25-27日)でのパウエルFRB議長講演(26日)を前に警戒感が強まっています。

26日のパウエル議長の講演では、経済指標を確認しつつ判断するという従来からのスタンスが繰り返されるだけに留まると考えられます。しかし、原油・ガソリン価格の下落によってインフレ率はやや和らいではいるものの依然として高水準にあり、8月の消費者物価指数(9月13日発表予定)で大幅な改善を見ることは難しいと考えられる中で、FRBが0.75%の追加利上げを躊躇する理由には乏しいように思われます。ここから9月FOMC(9/20-21)に向けては0.75%利上げを織り込む展開になる可能性が強いと考えます。
ただし、0.75%の利上げが実際に行われれば、11月以降のFOMCでは利上げ減速への期待が強まるだけに相場の転換点になる可能性も考えられます。
22日に米JPモルガン・チェースのストラテジスト・チームは「大幅利上げは9月が最後になる」とのレポートを発表しています。今年後半に米国株の上昇が続く部隊が整い、金利に敏感な成長株がバリュー株を上回る成績を維持すると想定しています。この考え方には大きく共感をいたします。

日本株も足元では米国市場の動向に加えて、自民党の統一教会の問題や中国での停電(四川省での工場稼働停止)の影響が懸念され、当面は29000円前後が上限と考えますが、9月のFOMC
をボトムにボックス上限を突き破ることに期待します。

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