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アナリストコラム

9月FOMCでは利上げ幅よりドットチャートに注目 -藤根靖昊-

2022年08月30日

注目された26日のジャクソンホール会議におけるパウエル議長の講演は8分間の短いメッセージに“楽観論”への牽制が込められた内容でした。「物価の安定を回復するには引き締め的な政策姿勢をしばらく維持する必要がありそうだ」、「歴史は金融緩和を強く戒めている」、と。しかし、一方で「ある時点で利上げペースを緩めることが適切となる可能性がある」とも述べており、全体としてはこれまで述べてきた内容と同一であり、スタンスに変化が生じたわけではありません。9月のFOMC(20-21日)に関しても、「総合的に判断する」と明言を避けています。FRBのスタンスが変わっていないのに関わらず今回の講演で“タカ派”的な面を強調したのは、株式市場の楽観に釘を刺す必要があったのかもしれません。米国では株式市場の上昇による資産効果が働きやすく、インフレを助長する可能性が指摘されています。

さて、9月のFOMCの注目点は、利上げ幅(0.50%であるか0.75%)もありますが、それ以上に、年4回示されるドットチャートが焦点になりそうです。政策金利(FFレート)の予想分布(=ドットチャート)の中央値の水準が引き上げられるかどうかが注目されます。前回6月に示されたドットチャート(中央値)では2022年末が3.4%、2023年末が3.8%でした。現状の政策金利は2.25%~2.50%ですから、9月0.5%、11月0.25%、12月0.25%の利上げがこれまで一般的な見方でした。もし、9月のFOMCにおいて0.75%の利上げがなされるとなると政策金利は3.00~3.25%となり、2022年末の予想水準が引き上げられない限り、11月以降の利上げ幅は大きく縮小することになります。その場合は株価が反騰する可能性がありそうです。しかし、ドットチャートが引き上げられるとなるとそれに対する反応は複雑なものになりそうです。
目先的には、30日:コンファレンスボード消費者信頼感指数(8月)、9月1日:ISM製造業景況感指数(8月)、2日:米雇用統計(8月)が注目される。雇用が堅調であれば0.75%利上げへの織り込みが進むと思われます。

日本株は米金利上昇による円安トレンドから輸出企業の採算向上が見込まれることから足元は底堅く推移すると考えます。日本への入国時の海外での検査が条件付きで免除される(9月7日から)ことも追い風となりそうです。しかしながら、欧米並びに中国の経済減速への懸念は強まっており、2023年の世界経済減速の織り込みがどこかの時点で始まる可能性を鑑みると株価の浮揚があっても長期的な上昇トレンドにはつながらないと考えます。
ただし、利上げの終了が近づく中では、景気の影響が少ない成長株に回帰すると考えています。下落局面ではこれまでバリュエーションが高くて手が出しにくかった成長企業に是非、目を向けてください。

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