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アナリストコラム

FOMC通過で底打ちも、上昇相場の賞味期限は期間限定 -藤根靖昊-

2022年09月20日

13日発表の米消費者物価指数(CPI・8月)の伸びが市場予想を上回ったことを切っ掛けに、FRBの金融引き締め姿勢に対する市場の見方が“タカ派”的に傾いたことによって米国株式市場は下落しました。8月のCPIは、前年同月比+8.3%と7月(+8.5%)よりは若干低下しましたが、市場予想(+8.1%)を上回りました。特にコアCPI(食品とエネルギーを除く)が7月の+5.9%から+6.3%(予想は+6.1%)へと上昇したことが嫌気されました。

15日発表の8月の米小売売上高が前月比+0.3%と増加したこと、週間(9/4-10週)の新規失業保険申請件数が4千件下方修正された前週の改定値からさらに5千件下回り、5週連続で減少したこともインフレ懸念を想起させる内容となりました。懸念されていた鉄道会社労働組合の大規模なストライキはバイデン政権の介入によって15日に暫定合意に達しましたが、スト回避によってその代償としての賃金上昇は、インフレ圧力を一段と意識させるものとなりました。

20-21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)においては0.75%の利上げが確実視されております(1.0%利上げの可能性も残る)。それ以上に、同時に公表されるドットチャート(正式名称はSummary of Economic Projections)が注目されています。6月時点の政策金利の見通しは、22年末3.4%、23年末3.8%でしたが、今回上方修正されることが見込まれております。
19日の米債券市場では10年国債利回りが3.5%超に、2年債は3.97%に達したことから、22年末で4.0%前後の金利を市場は想定していると推察されます。最終金利の予想(23年末)は「3.75~4.0%」「4.0~4.25%」と分かれているようですが(日経17日夕刊:ウォール街ラウンドアップ参照)、これを上回るようであればネガティブ・サプライズが生じる可能性もあると考えられます。

FRBが見込む金利水準が市場の想定よりも高めであったとしても(その場合は一時的に下落することが予想されますが)、しかしながら、この2カ月くらいはFRBのガイダンスが不在の中で、市場は楽観と悲観の間で大きく揺れ動いていただけに、FOMCを境に底入れ反転上昇に向かうと考えます。ただし、景気後退懸念から上値の重い商状が続くことも考えられます。16日発表のフェデックスの決算が不振であったことに米国株が下落したように企業業績の悪化には敏感に反応する可能性が高いと考えます。

日本株は、米国株の底入れを受けて上昇トレンドに向かうと考えますが、世界経済減速を受けた企業業績悪化を織り込み始めるまでの期間限定になると思います。織り込みが本格化するのは来年度を視野に年明け以降を想定いたしますが、早ければ2Q決算が発表される11月頃にも織り込みが始まる可能性も考えられます。年末の日経平均株価に対して3万円を大きく超えるような見通しもあるようですが、楽観的と考えています。

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