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アナリストコラム

リターンリバーサルは期待外れなほど小さい可能性 -藤根靖昊-

2022年09月27日

FOMC(20-21日)の結果は、利上げ幅は0.75%と市場の予想通りでしたが、政策金利見通しは市場の想定を大きく超える利上げ継続を示唆する内容でした。22年末の政策金利見通しは4.4%(前回6月は3.4%)にも達し、11月の次回会合で0.75%、12月に0.5%の利上げが予見されます。23年末の政策金利見通しは4.6%(前回3.8%)でしたが、市場では5%への利上げの可能性も視野に入ってきたようです。
失業率予想も4.4%(前回3.8%)と上方修正されており、インフレ封じのために経済への悪影響を許容するFRBの姿勢が明確にされています。

世界経済の減速懸念が一段と高まり、金利上昇と株価下落が進んでいます。26日にOECDは23年の世界経済の実質成長率を前回6月の2.8%から2.2%に0.6ポイント引き下げました。特に米国(▲0.7ポイント)とユーロ圏(▲1.3ポイント)の引き下げが顕著です。
米10年国債利回りは26日には3.88%(FOMC前は3.4%台)に、2年債は4.35%(同3.9%台)にまで急上昇しています。NYダウ工業株30種平均は26日までに5日連続下落し、下落幅は合計で1,758ドルに達しています。

米国以外でも緊迫感が高まっています。
20日にロシアの支配地域であるウクライナ南部・東部の4つの洲がロシアへの編入の是非を問う住民投票を23~27日に実施することが発表されました。ロシアへの編入が決まれば(ほぼ既定路線)ウクライナの反攻をロシア領土への攻撃と看做して大量破壊兵器を使用する根拠ともなり得ます。他方で21日にプーチン大統領は部分的な動員令を発表したことからロシア国内で徴兵への反対と国外脱出の混乱も広がっているようです。
欧州地域もエネルギー問題を抱えて高インフレに揺れています。23日にS&Pグローバルが発表したユーロ圏購買担当者景気指数(9月)は前月比0.7ポイント低下し48.2と3カ月連続で50を下回りました。景気下支えを狙ってエネルギー価格急騰対策に約600億ポンドを投じることを23日に発表した英国ではポンド安に拍車がかかりつつあります。また、25日のイタリア総選挙では極右政党の「イタリアの同胞(FDI)」が第1党となったことから財政再建への不透明感からイタリア国債が売られて金利が上昇しています。

20日にはスウェーデンが政策金利の1.0%(0.75%→1.75%)引き上げを発表。22日にはスイスが0.75%(-0.25%→0.5%)の利上げを発表しマイナス金利から脱しました。22日にはフィリピン、インドネシア、台湾も利上げを発表しています。世界中で政策金利の利上げが進む中で、日銀は22日の金融政策決定会合において金融緩和を維持しました。それを受けて、円安圧力が加速的に強まっています。22日には約24年ぶりに円買い介入を行い一時的に押し戻しましたが、外貨資産の量と内容等から介入を継続することの限界が指摘されており、円安への警戒感が一段と強まっています。
前回の当コラムにおいて、「日本株は、米国株の底入れを受けて上昇トレンドに向かうと考えますが、世界経済減速を受けた企業業績悪化を織り込み始めるまでの期間限定になると思います」と述べましたが、反発の幅もかなり限定的にとどまる可能性がありそうです。本格反騰は米利上げトレンドの終息が見えてくる来年春以降まで待つ必要があるのかもしれません。

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