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アナリストコラム

反発局面では『利食い千人力』を心掛けよ -藤根靖昊-

2022年10月04日

先週は、英政府の大規模減税策発表を受け、インフレ懸念が高まり、英ポンド急落から金融市場に危機感が広がりました(26日)。英イングランド銀行が超長期国債を無制限に買い入れると発表(28日)したことから危機的状況は回避されましたが、インフレ懸念と金利上昇見通しの市場センチメントは変わらずに週末(30日)も大幅な株価下落が続きました。

経済指標も9月のユーロ圏消費者物価指数は前年同月比+10.0%に上昇(30日発表:8月+9.1%、市場予想+9.7%)、8月の米個人消費支出物価指数コアは+4.9%と前月から上昇(30日:7月+4.7%、市場+4.7%)するなどインフレ・金利上昇の懸念を強める内容でした。

加えて、「ノルドストリーム」への損傷により復旧見通しが立たないこと(27日)、ロシアがウクライナ東・南4州の併合への調印し核使用の可能性も示唆されたこと(30日)、イタリアへのガスプロム(ロシア)からのガス供給の停止したこと(1日)、OPECプラスが4日の会合で日量100万バレルの減産を打ち出すとの報道(2日)、北朝鮮による弾道ミサイル発射の継続など不安材料には枚挙にいとまがない状況でした。

4日(本日)の日本株市場は前日の米国市場の急騰(NYダウは2.66%高)を受けて上昇しました。9月のISM製造業景況指数が50.9(8月は52.8)と予想外に低下したことによって、米国債利回りが低下したことによります。
しかし、これでインフレ懸念が直ちに鎮静化するとは限りません。物価高とインフレが併存するスタグフレーションの懸念も今後は台頭する可能性が考えられます。3日は米NY連銀のウイリアムズ総裁は、政策金利はまだ景気抑制的な領域に達していないとの見解を述べており、FRBの利上げ姿勢が後退すると考えるのは早計と思われます。
今週は、ISM非製造業景況指数(5日)、米雇用統計(7日)の発表が予定されており、発表内容次第では、株価は上下に大きく振れる展開も予想されます。

日経平均株価のコンセンサスEPSは前週末の採用銘柄入替(日本電産採用:静岡銀行除外)によって全予想期間(今期・来期・再来期)で40円程度減少する影響が出ました。この影響を除外すれば概ね前週比横ばいではありましたが、コンセンサスDI(前週比プラスとなった企業数の比率)はまだ明確ではないが低下局面に入ったようにも見て取れます。企業側が発表する業績修正(全市場)も下方修正が増えてきています。企業業績の悪化が徐々に顕在化しつつあるように感じます。既にある程度の株価の調整が生じていることからみれば、短期間で大幅に下落する展開は考えられないと思いますが、反発は限定されると考えます。
地政学リスクをはじめ、不透明な領域に入るだけに決め打ちは避けた方が良いと考えます。ボラティリティの高い展開が続くだけに「利食い千人力」を心掛けたいと思います。

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