メニュー
アナリストコラム

トンデモ予想:米中間選挙で民主党が大敗すればウクライナ停戦協議へ -藤根靖昊-

2022年10月18日

先週は週初めからマーケットには弱気が漂っていました。ご意見番とされるJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOのネガティブ・シナリオもその一つです。「S&P500種がさらに2割の価値を失っても驚きではない」、「米景気後退が今から6~9か月後に生じる」という内容でした。ロシアによるウクライナのインフラへのミサイル攻撃の継続やバイデン政権の中国への先端技術の輸出規制強化の影響などが地政学リスクとして尾を引いています。
11日に発表されたIMFの世界経済見通しでは2023年の世界全体の経済成長率は7月時点の2.9%から2.7%と引き下げられました。また、11日には英イングランド銀行のベイリー総裁が英国債の買い入れオペを予定通り14日に終了すると念押ししたことから英ポンドは1.10ドルを割り込みました。こうした動揺の収拾を図るため、結果的にトラス英首相は法人減税を撤回し、クワーテング財務相を解任することとなりました(14日)。

注目度が高かった9月の米消費者物価指数(13日)は、前年同月比+8.2%と8月(+8.3%)からは鈍化したものの市場予想(+8.1)までは低下しなかったことから、一時的にNYダウは28,660.94ドル(前日比549.91安)まで下落しました。しかし、市場予想を下回ることが事前に有力視されていたことや、11月(1-2日)のFOMCでの0.75%の利上げがほぼ確実となったことから目先の悪材料出尽くしとなり、一転して売方の買戻しから前日比827.87ドルのプラスとなりダウ平均は3万ドル台を回復しました。

しかし、大幅高となったものの、あくまで売りポジションの巻き戻しであり、底打ちしたとは必ずしも言えず、引き続き不安定な状況が続くと考えられています。ただし、今後発表される経済指標が株式市場にとってはネガティブなものであっても織り込みが進みつつあり、11月のFOMCまでは上にも下にも大波乱は生じないものと考えます。

もし、年内に大きな転機があるとするならば11月8日の米中間選挙だと考えます。バイデン政権の支持率は低く、民主党の劣勢が伝えられています。中間選挙で共和党が上下院の過半数を占め、民主党が大敗すれば、株式市場は上方か下方かに大きく反応する可能性があるかもしれません。
ネガティブ・サイドとしては、トランプ元大統領が復権することで再び米国社会の分断が強まり、自国優先主義が世界に蔓延るという見方です。一方、ポジティブ・サイドはちょっとトンデモ予想かもしれませんが、NATOに対してトランプ氏は否定的であり、そのためウクライナへの支援の継続が困難となり、停戦協議が始まるという見方が出てくるかもしれません。ただし、民主党あるいは共和党のどちらが勝利しても選挙の不正を訴える混乱が生じるかもしれません。

今週は16日に中国共産党大会が開幕し、習近平総書記の3期目が確実視されています。一方、中国国家統計局は17日に7-9月期のGDPをはじめ党大会期間中(23日閉幕)は統計発表を行わないことを発表しました。予定されていたのは、18日:7-9月期GDP、小売売上高・鉱工業生産・固定資産投資等(9月)、19日:70都市住宅価格動向(9月)などです。極めて異例であり、今後の中国の経済統計には恣意的な運用がなされる可能性も懸念されています。
また、習近平総書記は台湾統一をめぐり「武力行使の放棄を約束しない」と語ったことを受けて台湾政府をはじめ各所に緊張が走りました。企業は台湾有事を想定した中国に依存しないサプライチェーンの見直しを急速に求められそうです。

日本株は米国株式市場次第の面が強いものの、企業業績の下方修正と円安が齎すマイナス影響の認識から上値は限定される展開が続くと考えます。ただし、日経平均株価のBPS(1株純資産)は23,500円程度と考えられますので、(有事や世界的な金融恐慌を別にすれば)下値も硬直的であると考えます。

最後に少し中期的な見方ですが、米国の利上げの終了時期は来年春との前提を置くなら、それを織り込み始める来年1~3月頃には底打ち反転に向かうと考えられます。ただし、米国の利上停止には経済減速が顕在化している可能性も同時に考えられることから、企業業績の悪化には注意が必要です。そのため、景気の影響を受けにくい、また金利上昇過程でバリュエーション調整を余儀なくされた成長株にこそチャンスがあるように感じます。ここから年末にかけてはハイ・グロース株の再点検をお薦めします。

余談ですが興味深いセクターとしては、リユース業界が挙げられます。
ブランド品等のリユース販売・オークションを手掛けるバリュエンスHD(9270)が14日に発表した22/8期決算は営業利益が前期比+61.6%と大きく伸びました。とりわけ4Q(6-8月)においては海外売上高が前年同期比+90.6%とほぼ倍増となっています。海外のオークション参加者を広げた効果に加えて円安も追い風となりました。
リユースショップを広域展開するトレジャーファクトリー(3093)も23/2期2Q決算(14日発表)において営業利益は5.7倍に急拡大しました。単品管理の徹底によって利益率が向上したことが主因ですが、買取依頼が急増しており、店舗によっては受け入れを停止するケースもあるようです。
消費者がモノを所有することへのこだわりが薄れる中でリユース市場が拡大しています。SDGsの観点や、実質可処分所得が減少する経済環境下でリユース品活用も進んでいます。リユース関連銘柄では他にも、メルカリ(4385)、コメ兵HD(2780)、ハードオフコーポレーション(2674)、BuySell Technologies(7685)などが挙げられます。一度、チェックして見てください。

誠に恐縮ですが来週は当コラムをお休みさせていただきます。

アナリストコラム一覧 TOPへ戻る