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アナリストコラム

米利上げペース鈍化は織り込みすぎか!? -藤根靖昊-

2022年11月01日

10月21日にウォールストリート・ジャーナル紙が「12月のFOMCでの利上げ幅の縮小を11月(12日)のFOMCで検討するだろう」との観測を報じました。これを端緒にダウ工業株は28日まで6営業日連続で上昇しました。この間の上昇幅は2,528ドルにも及んでいます。この観測記事以外にも利上げ鈍化への期待を強めたのは、126日にカナダ銀行が前回の0.75%から0.5%へと利上げ幅を縮小したこと、227日のECB理事会では0.75%の連続利上げがなされたが「3回の連続の大幅利上げにより、理事会は金融緩和からの撤退を相当程度進められた」との声明文が次回会合での利上げ鈍化に期待を与えたこと、 3)経済指標も芳しくない結果が続いていること、が挙げられます。24日に米S&Pグローバルが発表した10月の購買担当者景気指数が前月比低下、25日発表のコンファレンス・ボード消費者信頼感指数は3カ月ぶりに悪化しました。

今週は10月の統計として、1日:ISM製造業景況指数、3日:ISM非製造業景況指数、4日:米雇用統計と続きますがいずれも前月より悪化が見込まれていることも利上げ鈍化への支援材料となっているようです。

しかし、11月のFOMCでの0.75%の利上げは確実視されており、12月にペースを緩めることを検討したとしても直ちに公表されるかどうかは分かりません(議事録要旨の公表は23日)。また、9月時点での22年末時点の政策金利見通し(4.4%)からすれば12月の利上げ0.5%は既定路線とも言えます。

28日発表の9月の個人消費支出(PCE)物価指数ではコア価格指数が前年同月比+5.1%と8月(+4.9%)よりも伸びが加速しており、まだインフレ鎮静化の兆しが表れているとは言い難い状況です。現在の株高は9月のFOMC後に利上げ加速を織り込み過ぎた反動と考えられ、再び揺り戻しが生じることが懸念されます。

さて、118日の米中間選挙では共和党優勢が伝えられておりますが、共和党が大勝すれば短期的には社会の分断や自国主義の蔓延というネガティブ面が強調される可能性もあります。しかし、シェールガスなど化石燃料への開発促進・インフラ整備によるインフレ抑制やウクライナに対して現実主義的態度を取る可能性も考えられます(少なくともそうした憶測が生じると予想します)。いずれにしても大きな転機が訪れそうです。

日本株に関しては、引き続き欧米市場の動向次第の面がありますが、遅くとも来春頃までには米国の利上げ停止(一時的?)から反騰局面に向かうと考えられます。しかしながら、アナリスト・コンセンサス予想を見ている限りでは、主力銘柄の企業業績はあまり芳しくありません。日経平均株価のコンセンサス予想EPSは来期ベース・再来期ベースともに下降トレンドが続いています。来期予想は今期予想をやや下回っており、減益が予想されています。コンセンサスDI(日経平均採用銘柄に関して前の週よりも予想EPSがプラスになった企業数の比率)は来期ベース、再来期ベースともにこの2週間は50%割れとなっています。

やはり、米国の利上げ停止を視野に置くのであれば、景気動向の影響の少ないグロース銘柄に着目すべきと考えます。

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