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アナリストコラム

利上げ到達点の不透明感が薄らぐ中で、業績悪化懸念に関心が強まる -藤根靖昊-

2022年11月15日

注目を集めました米中間選挙(8日)は、従前予想においては共和党が圧勝する可能性も指摘されておりましたが、レッドウェーブが生じたとは言い難く、上院では民主党が多数派を維持する結果(12日)となりました。米国株市場においては、7日、8日と共和党勝利を見込んで株価は上昇しましたが、接戦が伝えられた9日には一転して大幅下落になりました。
しかしながら、10日発表の10月の米消費者物価指数(CPI)が、前年同月比+7.7%と市場予想(約8.0%)を下回ったことを受けて、国債利回りが低下、ドル安(円高)、株価大幅上昇となりました。米CPIはコア指数も9月の6.6%から6.3%へと低下した他、コア指数から住居費を除いた指数でも0.1%の低下となりました。
14日にFRBのブレイナード副議長は、「米金融当局が利上げ幅を小さくする時期が近くやってくる」との見解を示しました。12月のFOMC(13-14日)では(0.75%から)0.5%の利上げが中心的な見方となり、ターミナルレート(最終利回り)の市場見通しも4.75~5.00%へと引き下げられました。
今後も各種経済指標やFRB高官の発言等で金利と株価に揺らぎが生じる局面はあると考えられますが、その影響度合いは小さくなりつつあると考えられます。
他方で、企業業績への懸念が増加しています。QUICK・ファクトセットによる11日時点で集計では7-9月期の世界の企業業績(純利益)は前年同期比▲3%と2四半期連続の減益となりました。また、アナリストコンセンサス集計では10-12月期には▲8%の減益が見込まれている模様です。

国内企業業績見通しも芳しくはありません。日経平均株価のコンセンサス予想EPS(TIW算出)は、今期予想は円安の影響もあり強含みですが、来期・再来期予想においては減少トレンドにあります。コンセンサスDI(前週比で予想EPSが変化した企業の内のプラスになった比率)では来期ベースでは4週続けて中央値の50%を下回り、下方トレンドが明瞭になってきています。
今後の株価は、米利上げ停止によるバリュエーション改善の恩恵を得る前に、来期業績への減益見通しが織り込みを通過する必要があるように感じます。暗号資産交換所のFTXトレーディングの連邦破産法11条の適用申請など、金融システムへの不安も残ります。筆者は日経平均株価の本格出直りは来年4月以降と想定しており、それ迄には一時的に27,000円を割り込む局面もあると考えています。

今週は、16日:米小売売上高(10月)、17日:日本貿易統計(10月)などの発表が予定されておりますが、大きな影響はないものと考えます。

主力大型株に業績悪化懸念がある局面では、利上げ停止期待から高バリュエーション株の出直りが継続すると考えます。IPOから一定の時間を経過し、株価が落ち着いた企業の再チェックをお勧めします。

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