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アナリストコラム

来年の日本経済は、米中の影響で軽い景気後退に -塚崎公義–

2022年12月23日

■米国は金融引き締めで不況に
■中国経済は失速するかも
■中国経済の失速は悪い影響ばかりではなさそう
■国内要因は特に見当たらず

(本文)
■米国は金融引き締めで不況に
米国は、インフレに苦しんでおり、金融が引き締められている。それによって景気は減速の兆しを見せており、来年には景気後退が免れないだろう。もっとも、すでにインフレは沈静化する兆しを見せているため、過度な金融引き締めは回避され、景気後退も深刻なものとはならないと期待される。

問題なのは、途上国への悪影響かも知れない。米国の金融政策は米国のインフレと景気を考えて決定されるが、ドルを借りている途上国にも広く悪影響が及ぶ。したがって、世界経済にとって最適な金利よりも高い金利が選択されてしまう可能性が高いのである。

特に、途上国がドルを返済しようとする際に「ドルを買って返済するのでドル高が進み、輸入インフレに苦しむと同時に日本からの輸入が難しくなる」ことが懸念される。影響が軽微であることを祈りたい。

■中国経済は失速するかも
米国とは異なり、中国経済は本格的に失速するかも知れない。筆者は中国経済には詳しく無いが、それでも大いに懸念せざるを得ない材料が3つもあるからだ。不動産バブル崩壊、新型コロナの感染爆発、経済統制の強化である。加えて、諸要因による「中国離れ」の動きも気になる所である。

中国の不動産バブルが崩壊するという懸念は、10年以上前から聞こえていたが、いよいよ現実のものとなるかも知れない。大手不動産開発企業の破綻が噂されており、すでに不動産投資は大きく落ち込んでいるようだ。バブル崩壊に伴う金融危機は、中国共産党が阻止すると思われるが、それでも中国の主要産業である住宅建設が失速するとすれば経済への影響は甚大であろう。

新型コロナの影響も懸念される。最近、ゼロコロナ政策が緩和されたが、中国人は免疫が無いため、感染爆発が懸念されている。感染拡大で労働力が不足するかも知れないし、状況によっては都市封鎖が再開されるかも知れない。また、感染爆発が一巡した後も、新型コロナは変異するたびに感染力が強くなっているようなので、再び都市封鎖等が強化される可能性も決して小さくなさそうだ。

経済統制の強化も大いにビジネスマインドを低下させるだろう。経済の発展よりも共産党政権の安定を重視する姿勢が強まっているようなので、改革開放によって発展した分が巻き戻される事になるかも知れない。中国政府は経済成長に向けて舵を切っているようだが、ビジネスマインドが冷え込んでいては投資は見込みにくいだろう。

そうした中で、西側企業の中国離れも加速するかも知れない。都市封鎖や感染爆発を恐れる企業、経済統制の強化を嫌う企業等が中国への投資を抑制することに加えて、米中対立による米中経済の分離が進むかも知れないからだ。長期的には米ソ冷戦時代のように貿易等が行われなくなるかもしれず、そこに向けて少しずつ貿易や投資が減少していくという流れが来年も続くであろう。

■中国経済の失速は悪い影響ばかりではなさそう
中国は巨大な市場であるから、中国経済が失速すれば日本の輸出は大打撃を受けかねない。中国が感染爆発等で部品を供給できなくなれば、日本企業が必要な部品を調達できずに生産が滞ってしまう可能性もあろう。

しかし、悪い話ばかりではない。中国は資源の最大輸入国であるから、中国経済が失速すれば世界の資源価格が下がるかも知れない。そうなれば米国のインフレが収まり、米国の金融引き締めが緩和に転じるかも知れない。そうなれば、世界経済にとっても世界の株式市場等にとっても大いに助かる話であろう。

「ゼロチャイナ」によって中国への投資が減った分の一部は、日本国内で投資されるかも知れない。そうなれば、日本の景気にプラスであろう。中国人の富裕層の資金が逃避してくれば、日本での消費や投資が増えるかも知れない。

■国内要因は特に見当たらず
日本国内で景気に影響しそうな特記事項は見当たらない。もちろん、新型コロナがどうなるかによって国内景気は大きく影響を受けるかも知れないが、最近の消費動向を見る限り、人々は相当程度新型コロナ慣れしてきたようである。

日本でも若干の物価上昇が見られるが、景気への悪影響は限定的であろう。資源価格高騰の影響はたしかに苦しいが、円安による物価上昇は一方で輸出増加等と相殺するので、円安の影響はプラスマイナス0だと筆者は考えている。

バブル崩壊後、金融危機等が一巡したのちの長期停滞期の日本経済を振り返ると、国内要因が景気を動かしたというよりは海外要因で景気が変動した方が遥かに多い。「山低ければ谷浅し」といった感じであろう。今回も、そうなりそうである。

本稿は以上である。なお、本稿はわかりやすさを優先しているため、細部が厳密ではない場合があり得る。

(12月21日付レポートより転載)

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