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アナリストコラム

“楽観派”の優勢はいつまで?既に崖っぷちかも  -藤根靖昊-

2023年01月31日

NYダウ平均は、20日から27日まで6営業日連続で合計933ドル上昇しました。この間に公表された経済指標等は、リセッション懸念(悲観)ともインフレ鎮静化(楽観)ともいずれの解釈も可能なものと考えられますが、現状では楽観派が勝っているようです。
1)20日にFRBのウォラー理事が「次回FOMCでは0.25%の利上げを希望する」と述べ、0.25%の利上げが市場では既定路線となりました。
2)23日に次回のFOMCで今春の利上げ停止を検討する可能性があるとの観測報道がありました。
3)コンファレンスボード景気先行指数(23日)、S&Pグローバル購買担当者景気指数(24日)など景気後退を示す経済指標が続きました。
4)カナダ銀行(中央銀行)が利上げ幅を0.5%から0.25%に縮小すると同時に利上げを一時停止して様子を窺うことを発表しました(25日)。
5)米国10-12月GDPは年率2.9%と7ー9月の3.2%から減速しましたが、比較的堅調でありリセッションには至らないと解釈されたようです(26日)。
6)12月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比+5.0%と11月(同+5.5%)から低下しました(27日)。
一つ一つの内容を精査すると違った解釈もできるのかもしれませんが、どれもが楽観的に受け止められたようです。

今週はFOMC(31日-2月1日)が予定されておりますが、0.25%の利上げが行われ、パウエル議長が会見で楽観論に一定の釘を刺すことが想像されるものの、それもほぼ織り込まれているように感じます。
むしろ、市場の揺り戻しが生じるとするならば、1日:12月の雇用動態調査(JOLTS)、3日:雇用統計(1月)など、雇用関係の指標が中期的なインフレ動向を示唆するものとして注目されそうです。マーケットではあまり注目されなかったようですが、1月15日-21日週の新規失業保険申請件数は前週の19.2万件から18.6万件へと減少し(市場予想は20.5万件)、4週連続で減少しています。ハイテク企業でのリストラが話題になっていますが、サービス業での人材不足はまだ鎮静化には至ってはいないように伺えます。

さて、国内では日銀の金融緩和策維持に対する圧力が再度と高まりつつあるようです。日銀の買入れによって長期国債の流通量が枯渇する中で、英FTSEラッセルは代表的な国債指数から日本の10年物国債を銘柄ごとに除外し始めました。26日に、国際通貨基金(IMF)は日銀の政策に対する修正提案を発表しています。1)長期金利の変動幅の柔軟化、2)金利操作の対象国債を短期に、3)目標を金利から国債の購入量へ移行、という内容です。なんら拘束力のあるものではありませんが、中期的に日銀は考慮すべき課題と言えるでしょう。
27日には1月の東京都区部の物価上昇率はコア総合で前年同月比+4.3%(12月+3.9%)と4%台に上昇しました。一段と金利上昇圧力が高まりそうです。
国内3月期決算企業の3Q決算が先週から本格化しておりますが、下方修正がポツポツ目立ちます。TIWが算出している「コンセンサスDI」(コンセンサス予想EPSが前週比でプラスになった企業の割合)も下方トレンドが色濃くなっております。

崖っぷちはもう目前かもしれません。細目に利確をしつつ、キャッシュポジションを高めて、相場下落時に買い出動できるように備えたいと考えます。

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