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アナリストコラム

欧米中の経済が弱含む中で日本株の独歩高はあり得るのか? -藤根靖昊-

2023年09月19日

先週は、米国株式は原油価格の上昇、米長期金利の上昇、全米自動車労組のストライキ入りなどを受けて愚図ついた展開となりましたが、日本株は日経平均が週間で927円(+2.8%)上昇しました。それ以上にTOPIXの上昇率(+2.94%)は高く、年初来高値を更新しました。

日本株の上昇は、円安進行による輸出採算の回復、それに伴う企業業績見通しの上方修正への期待、中国投資からの代替先としての日本、低PBR株の収益性改善への期待、内閣改造による早期解散・総選挙の可能性、20年物国債入札が順調(応札倍率が前回の2.80倍から3.94倍に)であったこと、アーム社のナスダック市場上場に伴う半導体関連への期待、などが要因として考えられます。
確かに消去法的な選択肢としての日本株のというのはある程度の合理性はありそうです。しかしながら、欧米ならびに中国経済が問題を抱える中で、日本だけが好調を持続できるということは考えにくく、ファンダメンタル(バリュエーションを含む)というよりも需給や投資家動向による一過性の現象ととらえております。

欧州ですが、11日に欧州委員会は経済見通しでユーロ圏の23年実質成長率を前回(5月)から▲0.3pt引き下げ0.8%としました。ドイツは▲0.5%と景気後退に転落する見込みです。14日に開催されたECB理事会では0.25%の利上げを行い主要金利4.5%としました。事前の市場予想では利上げは見送られるとの見方もありましたが、ラガルド総裁は「インフレ率は低下し続けているものの高すぎる状況がかなり長引きそうだ」と述べており、原油価格が上昇している現況では、高インフレとリセッションの狭間で厳しい舵取りを余儀なくされそうです。

米国は13日発表の消費者物価指数は総合指数が前年同月比+3.7%(7月+3.2%・予想3.6%)と上昇したもののコア指数(エネルギーと食品を除く)は+4.3%(7月4.7%)と低下しました。これに対する解釈はやや分かれているようですが、エネルギー価格上昇には警戒が求められそうです。
14日発表の米小売売上高(8月)は、前月比+0.6%(市場+0.2%)と増加しましたが、ガソリン価格上昇の影響が出ており、実態は弱いとの見方が有望です。
11日にニューヨーク連銀が発表した8月の消費者調査において「前月よりクレジットカードの利用やローンを組むのが難しくなった」とする回答が、データの取れる2013年6月以降で最高となりました。15日のミシガン大学消費者態度指数(9月)は67.7と前月比▲1.8pt低下しました。今後のエネルギー価格の動向によっては、米国も再びリセッション懸念が強まる可能性が考えられます。

中国は15日発表の8月主要統計では、社会消費品小売総額、工業生産ともに前月よりは若干上向きました。ただし、固定資産投資(1-8月)は+3.2%と前月(1-7月)+3.4%より減速しました。同日発表の主要70都市の新築住宅価格動向(8月)では52都市が下落(7月49都市)。中古物件では66都市が下落となりました。1-8月の新築住宅販売面積は前年同期比▲5.5%となっています。こうした環境下で中国不動産開発会社である遠洋集団がすべての外貨建て債券の支払いを停止しました。14日に中国人民銀行は預金準備率を0.25%引き下げましたが、中国経済の底打ちはまだ見えない状況です。

今週は、米FOMC(19-20日)、日銀金融政策決定会合(21-22日)が注目されます。FOMCでは今回は様子見で利上げは見送られるというのが市場参加者の大半の見方ですが、経済見通し(SEP)によっては、株式市場が揺れる可能性も考えられます。
日銀も政策変更は行われないと考えますが、9日の観測気球(読売新聞の植田総裁のインタビュー)において市場が動揺しなかったことを踏まえて、記者会見で植田総裁がもう一歩踏み込んだ発言を行う可能性も考えられます。

市場では10月下旬から始まる7-9月期決算への期待が高まっていますが、決算で上方修正が少なく、企業の慎重姿勢が目立つようであればむしろ期待外れに終わる可能性も考えられます。

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