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アナリストコラム

環境変化はまだ大きくないが、市場センチメントは悪化が続きそう -藤根靖昊-

2023年09月26日

20日の米FOMCは、予想通り政策金利は据え置かれました。経済見通し(SEP)において政策金利予想は、23年末5.6%(6月時点5.6%)と変わらず、年内にあと1回の利上げを参加者19人中12人が予想しているという内容でした。また、24年末は6月の4.6%から5.1%へと0.5pt引き上げられました。これは24年前半に利下げに転じる可能性は低いことを示唆しています。こうした結果はかなりの部分は事前に予想されていたものと思われますが、市場はやや“タカ派”と受け止めたようでした。

このようなFRBの姿勢と、原油価格のさらなる上昇見通し、全米自動車労組のストライキによる自動車価格の上昇、新規失業保険申請件数(21日発表)が8カ月ぶりの低水準になったこと、債務上限問題に関連した政府機関閉鎖の可能性などから米国債利回りは大きく上昇しています。
25日には10年債が4.546%(07年10月以来)、30年債が4.6698%(11年2月以来)の水準となりました。また、米金利上昇を受けて、ドル円は148.96円と昨年10月以来の水準に円安が進んでいます。
円安を加速させている要因としては、21-22日の日銀金融政策決定会合後の記者会見において植田総裁が、「現時点では不確実性が極めて高く、これまでの説明から変化があるわけではない」とマイナス金利政策の早期解除観測に対して打消しを行ったことも挙げられます。

19日に経済協力開発機構(OECD)が発表した世界経済見通しにおいて、24年の世界全体の経済成長率は前回(6月)から0.2pt引き下げられ2.7%となりました。ユーロ圏の回復の遅れや中国の減速が影響しています。23年について6月時点からは0.3pt引き上げられて3.0%となりますが、年前半の米国経済が好調であったことが要因であり、米国も24年には減速が見込まれています。
中国は不動産市場の構造問題が深刻であり、19日に不動産販売額14位の融創中国が米国で連邦破産法15条を申請しました、また、25日に中国恒大集団が2020年に発行したオンショア債40億元(約815億円)の元利金支払いを履行しなかったことにより、同社のCEOだった夏海鈞氏とCFOだった潘大栄氏が当局に拘束されたと報道されています。

国内では20日に8月の貿易統計が発表されましたが、輸出(金額)は前年同月比▲0.8%と2カ月連続のマイナスとなりました。輸出数量指数は10カ月連続のマイナスとなっており、円安効果が享受できているとは言い難い状況です。今後の国内消費動向には注意したいと思います。
一つ一つは大きな変化や問題ではないかもしれませんが、マイナス材料が目立ち始めてきたように見受けられます。カナダとインドの対立も国際情勢のバランスを変える切っ掛けになるかもしれず注視が必要です。
足元では投資家のセンチメント悪化が続くと思われ、下押し圧力が強まりそうです。

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