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アナリストコラム

中東情勢次第による市場乱高下はまだ続く -藤根靖昊-

2023年10月17日

イスラエルによるガザ地区の完全封鎖と総攻撃の表明によって、中東情勢は緊迫感を強めました。ただし、イスラエルの過剰防衛に対する米国をはじめとした国際社会の批判から、民間人の避難を確保すべく、イスラエル側の総攻撃にはまだ至っていない状況です。18日にはバイデン米大統領がイスラエルを訪問することが伝えられており、打開に向かうことを期待します。

先週は、地政学リスクの高まりから米国債への資金流入が生じたことや、経済減速懸念によるFRBによる年内あと1回の利上げが見送られるとの見方も広まり、その結果、長期金利が低下しました。米国株式は堅調に推移したことも追い風となり、日本株は週間で、日経平均株価が1,321円の大幅上昇となりました。IMFの経済成長率見通し(23年)が1.4%→2.0%へと大きく引き上げられたこと(10日)、ファーストリテイリング(9983)をはじめとした小売業の好業績も奏功したものと考えます。
ただし、週末の米ナスダック市場において、インフレ懸念の台頭や地政学リスクの高まりが強く意識されたことを受けて週明けの16日は大きく下落しました。中東情勢は依然として流動的であり、市場のセンチメントも目まぐるしく動いており乱高下する市場展開が続きそうです。

12日発表の9月の米消費者物価指数は前年同月比+3.7%と市場予想(+3.6%)をわずかですが上回りました。8月からは横ばいの推移であり、まだインフレの低下ペースは緩慢といえます。同日発表の米新規失業保険申請件数(10/1-7日)は20.9万人と前週比横ばいであり、労働需給は強い状態が続いています。先週半ばに4.5%台にまで低下した米10年国債利回りも昨日は4.75%と再び上昇傾向にあります。
JPモルガンのジェイミー・ダイモン氏は、労働需給の引き締まり、米政府の負債水準、インフレ率の高止まりから金利が一段と上昇する可能性を指摘していることも気になります。

13日発表の中国の消費者物価指数(9月)は前年同月比横ばいでした。卸売物価指数は▲2.5%とマイナスです。9月の中国貿易統計は輸出入ともにマイナスが続いています。
中国、欧州に経済状態は弱含んでおり、米国も減速感が出始めました。こうした環境で日本は比較的堅調に推移していることから日本株が選好されるとの見方もあるようですが、世界経済の影響は日本にも及ぶものと考えられます。貿易統計(日本)の輸出は8月まで金額ベースで2か月、数量指数では11カ月連続のマイナスでした。9月上中旬の速報値では輸出(金額ベース)+4.4%ですが、円安を考慮すれば数量指数のプラス回帰は難しそうです。
9月の貿易統計は19日発表予定であり、7-9月期決算を占うポイントにもなると考えます。

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